開業医のための医療経営マガジン

LINE公式アカウント

公式SNS

新着情報

【シリーズ・第4回】看護師として組織として成長を|働き続けたい職場とは

広島県の中心部で外来・入院診療や訪問診療を行っている「ほーむけあクリニック」。

患者さんや働く仲間が集まり、よい循環を生み出している医療経営のヒミツを探る連載。4回目の今回は、外来主任を務める看護師の道廣詠子さん(42)に職場づくりや目指す診療所の姿などについて聞いた。

患者さんの近くでチームでサポートできる看護師の道に

7年間、言語聴覚士(ST)として働いた経験がある道廣さん。病院や施設で働いてきたが、勤務する中で当時、STは吸引ができないこともあり、看護師免許をとろうと決意する。患者さんと近い距離で、そしてチームで患者さんのために働ける看護師という職に興味があったこともあり、32歳で看護師としての道を歩み出した。

看護師になってからは、クリニックに勤めながら、自身の看護の幅を広げようと総合病院での夜間救急のアルバイトもしてきた。昼夜問わず働いていたとき、第2子を妊娠。出産を機に退職し、1年間の育児休暇の末、ほーむけあクリニックで看護師を募集していることを知り、2018年4月からほーむけあクリニックで働き始めた。現在は外来主任を務めている。

働くスタッフが感じる「どこにも負けない働きやすさ」

ほーむけあクリニックの職場について「働きやすさはどこにも負けない」と太鼓判を押す。

「組織に柔軟性があり、風通しがよく、とにかくスタッフの仲がいい」という。

道廣さんは、「院長や幹部職員の『まず身近な人に優しくないと、患者さんにも優しくできない』という考え」や、「意見は言ってもいいが、悪口は言わないという院内ルールがあるなどの院長の組織作り」がよい雰囲気に繋がっているのではと話す。

ほーむけあクリニックで働きたいという人や、他業種も含めて見学に来てくれる人たちが多い。もともと患者さんだった人が、いまは看護師の仲間として働いている人もいる。子どもが受診していた母親で、一人は育児休暇中の人、もう一人は看護師として現役で働いている人だった。さらに現在も、働きたいと名乗り出る患者さんもいるほどだ。

「患者さんとして、医師の診療場面や看護師、事務職員などと接する中で、うちのいい雰囲気が伝わっているのかな」と道廣さんは振り返る。

患者さんに限らず「クリニックに興味を持ってくれた人を大切にする」というのが、ほーむけあクリニックのスタンスだ。

医療面からサポートを 患者さんに寄り添うクリニック

医療機関では風邪などの主訴を診察して終わりということが多い中で、ほーむけあクリニックでは、「主訴だけでなく、こうなるに至った何かがあるのでは」と考えることを大切にしている。

総合診療のため家族で来られることがほとんどで、子どもの診察時に両親が疲れていると感じた際には家族の状況や背景、相談できる人がいるかなどと声をかける。

道廣さんは「おせっかいと思われる人もいるかもしれないが、患者さんと程よい距離感を保ちながらも、医療の立場から何か協力できることはないか」という思いで患者さんに接していることは、他にはない強みだと自信をのぞかせる。


ほーむけあクリニックでは、看護師が最初に患者さんを問診し、その後、医師が診察をする。「クリニックに来て緊張する人もいるだろうし、風邪なら風邪のことしか言ってはいけないと思う人もいると思うが、他にも聞いてみようと思ってもらえる雰囲気づくりを大切にしている」と道廣さんは話す。

こうした雰囲気づくりは、診療面においてもプラスに働いているという。例えば、血圧の関係でクリニックにかかっていた高齢者が、足が痛いなど、血圧以外の身体の気になることを話してくれた。調べてみると大きな病気が隠れていたということもあったという。高齢者は特に生活の様子を聞くなど、雑談を大事にしている。

また、婦人科系の病気がある女性に対して、看護師が最初に問診をすることで、女性同士ということで話がしやすかったり、看護師が寄り添うことで患者さんの安心感に繋がったりしていると感じることもあるという。

「初診で緊張してうまく言えない人もいる中で、最初に看護師が話を聞くことで緊張をほぐすことができ、医師の前でも固くならず言いたいことが伝えられている姿がある」と道廣さんは話す。

強みを活かして患者さんの望みに応える

そんなほーむけあクリニックの一番の強みについて道廣さんは、「外来から在宅医療に繋げられること」だという。

例えば、診療所に定期的に通っていた一人暮らしの高齢者の方にガンが見つかり、一人での生活が難しくなった。病状が悪くなり、入退院を繰り返し、最期はクリニックで看取った。患者さんの病気のステージに沿って、一貫して介入することができたのだ。

その患者さんのことをよく知っているスタッフが最期まで関わることができ、患者さんの安心にも繋がり、「ここで診てもらえてよかった」と声をかけられたという。

患者さんがどういった最期を望んでいるかによって柔軟に介入を変えられるのが、外来から入院診療、在宅医療まで手掛けるほーむけあクリニックの強みなのだ。

道廣さんは「元気なうちから顔見知りになり、病気になったときに、相談できる医療機関を持っておくことが大事」だと考えている。

「地域に根ざした診療所として、最期まで責任を持てる場所は、地域にとって大事な存在、赤ちゃんから高齢者までカバーできる診療所でありたい」と力を込める。

一人一人のスタッフに合わせて働き続けられる環境を

ほーむけあクリニックには、医師5人、看護師16人、介護士が7人、ケアマネ1人、作業療法士2人、臨床検査技師1人、事務が8人、そして、人と地域を繋げるリンクワーカーの合わせて39人のスタッフが働いている。

ほーむけあクリニックは、女性が多い職場だ。看護師の中にもフルタイム勤務、パート勤務、時短勤務といった多様な働き方があり、さらに妊婦さんには、体調に合わせて夜勤の回数を調整するなどして対応している。

女性はライフイベントがあるため、一人一人のイベントに合わせて、休みの日数や時短勤務をどう取り入れるか、育休から復帰する際に働き続けられる部署はどこがいいかなど柔軟に対応できるようにしている。

職場と自宅との距離や、近くに頼める人がいないといったスタッフの状況を踏まえ、働き続けられる環境を整えるよう、一人一人を大切にしている職場だと道廣さんは感じている。

しっかり休むことも大切にしていて、誰かが病気などで休んでもみんなでサポートできるよう、日ごろから一つの仕事を2人でやるようにし、長期休暇を気兼ねなくとれる雰囲気をつくっているという。

幹部職員になったことで変化した組織への見方

横林院長や看護師長が、スタッフに対して「こういうところがいい」というポジティブな声かけをしてくれ、自分の強みを引き上げてくれるという。

実は道廣さん、もともと管理職はできないと思っていた。「自由奔放に生きてきたタイプだったので人の面倒をみられるか心配だった。きめ細かく人を見ている幹部職員のみなさんたちのようにはなれないと思っていた」と振り返る。

管理職という壁が高いと感じていた道廣さん。「主任になってみないか」という打診を何度も断ってきた。しかし、「管理するということではなく、スタッフになじみ、頼れる存在という自身のキャラクターを活かした管理職になればいい」と言われ、それなら自分にもできるかもしれないと引き受けた。

道廣さんが外来主任になって、1年余り。組織を作っていく立場になったことで、クリニック全体をみて、いま自分はどういう声かけをすべきかを考えるようになった。幹部職員の考えがより分かるようになった分、先のことを見据えて、いまがあるということを知った。

「自分の子どもが、部下だったら、こんな上司がいたら一緒に働きたいと思ってもらえるか」という視点で考え、相談しやすい、話しやすい上司を目指している。「若い人たちにとって話しにくい管理職にはなりたくない。相談しにくい雰囲気があると組織としてもよい方向に向かないので、聞いてみよう、相談しようと言ってもらえるような存在になっていきたい」と語る。

最初はプレッシャーがあったが、人を管理するということではなく、組織を一緒に作っていくという考え方に変わったことで、働きやすくなり楽しく仕事ができていると笑顔を見せる。

専門職のキャリアアップだけでなく地域貢献も目指す

横林院長が医師としてだけでなく、社会貢献活動を行っている姿をみて、「自分たちも」と思うスタッフが多いという。

プライマリ・ケア看護師を目指している道廣さん自身も、看護師としてのキャリアアップだけでなく、地域や社会に役立つことをクリニックと共にしていきたいと話す。

プライマリ・ケアの勉強については、学ぶことで自身の看護にエビデンスがうまれると考えている。看護師は長く働ける仕事だとよく言われるが、実際は年を重ねると体力的なことだけでなく、覚えも悪くなるし、いつまでできるかという不安もあるが、勉強し続け、ほーむけあクリニックの定年まで働き続けたいと意気込みを語る。

さらに「若い子の価値観を柔軟に受け入れられる管理職になりたい」と考えている。管理職としての成長も目指しているのだ。

「近隣の人たちの笑顔を健康面からサポートする」というクリニックの理念がスタッフにしっかり浸透し、専門職としてのキャリアだけでなく、常に地域に根付く組織として成長し続けたいという志の高いスタッフが集まっていることが伺えるインタビューだった。

人を大切にする組織作りを行っている横林院長に感化されたスタッフたちがさらに高みを目指すことで、組織全体の躍進に繋がっているのだろう。

(横林院長の取り組みについて詳しくは連載1~3回をご覧ください)

連載企画の最終回となる次回は、看護部長やマネジメント室の室長を務める井ノ口亜希さん(42)に権限委譲などについて聞いた。

次回の配信は7月1日の予定です。

ほーむけあクリニックのHPはこちらから

著者:IGYOULAB編集部(イギョウラボ)

知りたいことや興味があること、そして地域医療に携わり先進的な取り組みを行っている先生方の
情報などありましたらぜひお寄せください。
取材を受けたい、記事で取り上げてほしいなどのご要望も受け付けています。
個別でのご相談やご要望は、お気軽に電話やメールでお気軽にお問い合わせください。

トゥモロー&コンサルティング株式会社
お問い合わせフォーム

#IGYOULAB #いぎょうらぼ #医業ラボ #イギョウラボ

運営会社 トゥモロー&コンサルティング株式会社

https://tac119.com/

おすすめ記事

まだデータがありません。