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患者さんを全人的に支える医師が求められる時代に 

高齢社会がもたらす診療所の役割や自身や職員の高齢化を含めた経営戦略などを考える特集「高齢社会。2040年までの経営戦略」。

今回は自立支援に特化した介護関連会社の経営・営業支援、人財採用定着支援を行うコミュニティを運営する介護コネクティブの寺本圭佑代表に、時代の変化に合わせた医療と介護の連携の大切さなどについて2回にわたってご寄稿いただきました。

理学療法士の社長が感じる今後の介護×医療戦略は時流に沿ったアプローチへ

介護コネクティブ代表の寺本と申します。

2005年に理学療法士国家資格を取得し、医療と介護の現場で経験を積んで参りました。介護分野に携わる中で考えたことは、介護には自立支援が求められていること、そのためには他職種連携が不可欠だということです。それを実現すべく「介護業界の未来と笑顔を共に創る」という理念に基づき、2018年に株式会社介護コネクティブを設立し、全国の介護関連企業の経営支援を行う経営者コミュニティの運営や、愛知県西尾市で直営の自立支援特化型デイサービスIKIGAIの運営などを展開しております。

医療介護現場で求められる関わりは、時代の流れとともに変化しています。私たち医療者に求められることは、時流の変化に沿った考え方・アプローチです。こちらの記事では、近年の介護業界の変化や地域に求められる医療機関になるための考え方、介護事業と連携するための方法についてご紹介します。

今後は地域医療に力を注ぎたい、介護領域と連携しながら地域になくてはならない医療機関を目指したいという方にぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

まず高齢者の「自立支援」にフォーカスする

介護保険法が制定されたのは2000年。ここから数回の改定がありました。

私が急性期の整形外科で理学療法士として勤務していた頃、医療保険法の改定がありました。毎日クリニックにきていた患者さんが「月13単位まで」との制限を受け、受診できなくなったのです。開院前の長い行例がその法改定とともになくなったのは、はっきりと記憶しています。

介護保険法が制定された2000年代は『介護=お世話をする』というイメージがありました。高齢者自らできることまで介助者が手伝ってしまうという事例が多くあったのです。しかし、2016年の政府の未来投資会議にて、安倍首相(当時)が『自立支援』を中心にした制度へ転換を進めると表明しました。本当に必要な人に必要なケアが届くように、国も施策を変えているのです。

このように、現場と国の施策の両面から、自立支援の必要性を感じたことが、現在の活動の原点となっています。

自立支援、つまり介護を必要としている高齢者が自分らしく自立して生活するため、医療介護従事者の役割は何なのでしょうか。その答えは、元気な高齢者の生きがい・目標を見つけ、社会参加へのコミュニティを作ることです。医療者が積極的にリスク管理や評価をし、医療介護の枠を越えた連携こそが我々のやるべきことなのではないかと考え、自立支援型の介護を推進する事業を始めました。

介護=自立支援を支える医療介護専門職とは

自立支援型の介護を支えるために、多くのスタッフが活躍しています。地域住民にスタッフ全員で関わりながら最適解を提案することが、医療介護サービス提供者の使命です。

介護保険を活用する際に大切な職種が、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)です。

ケアマネは一人ひとりの生活を支えるコーディネーターとしての役割を担っており、円滑に仕事するためには、医師からの情報提供が大変重要となります。

医師の役割はもちろん『疾患を診ること』です。しかし、地域の患者さんは疾患を持ちながら地域で生活している一個人でもあります。したがって、疾患だけでなく『生活を見る』という視点も必要不可欠です。

膝をみるだけでなく、膝をみながら『どうやったら歩けるか、旅行に行けるか』など、広い視点で考えることで、患者さんの生活がより豊かになります。

そのような視点で患者さんを見ようとすると、必ず必要になってくるのが『介護との連携』です。立場の異なる医療介護職がそれぞれの専門性を発揮し、患者さんのQOL向上に向けて介入することで、目の前の患者さんがより自分らしい人生を歩むことに繋がります。その活動の積み重ねによって周りからの信頼も得られ、地域になくてはならない診療所・クリニックになるのです。

病気だけでなく、患者さんの地域生活を全人的に支える医師が求められる時代

地域包括ケアシステムの変遷により、これまで医療機関が複数存在していたエリアでも、患者さんにとっては「中学校区域にかかりつけ医は1つあればよい」という考え方に変わっています。つまり、地域包括ケアに必要となるクリニック運営をしなければ、国の目指す指針から外れるというリスクが存在するのです。

ですから、街全体で職種や職域、保険内外の垣根を越えて、高齢者の健康寿命が伸びるよう働きかけをする必要があります。そこには患者さんの『疾患』と『生活』の両方を支えられる医師の力が必要となります。

病気だけでなく全人的に地域での生活を支える志がある先生は、ぜひ介護との連携を模索してみませんか。その先で、地域に強く求められる医療機関となっていくと信じています。

次回は、クリニックや診療所が介護事業を取り入れるための具体例と、それが実現した先の展望について紹介します。(次回は2月6日に配信予定です。)

著者:寺本 圭佑

株式会社介護コネクティブ代表取締役・理学療法士・介護支援専門員

2005年に理学療法士国家資格を取得し、医療現場で勤務。2015年から介護分野のリハビリテーションに関わる中で地元知多半島の在宅医療介護のインフラが整っていないことに衝撃を受け、2018年に株式会社介護コネクティブを設立。

「介護業界の未来と笑顔を共に創る」という経営理念の基、自立支援に特化した介護関連会社の経営・営業支援、人財採用定着支援のコミュニティ運営と、自社直営の自立支援特化型デイサービスIKIGAI(愛知県西尾市)の運営を行う。

株式会社介護コネクティブのHPはこちら

自立支援特化型デイサービスIKIGAI(愛知県西尾市)

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