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開業スタイルの変化

大切な勤務先選び

歯科医師として勤務する場所は大きく分けて、歯科医院勤務、大学病院勤務、公立病院や厚労省などでの公務員勤務スタイルの3つです。そして勤務しながら学び、大学卒業後5~10年で開業していることが多いです。

勤務スタイルは様々ですが、ほとんどの方は開業するために勤務先を選び、開業医になることを目指しています。以前に比べ勤務スタイルに変化があり、それが開業スタイルの変化に繋がっているように感じています。勤務先によって開業に対する意識や規模感が間違いなく左右されます。故に勤務先選びは大切だということを最初にお伝えしたいと思います。

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変化する勤務先選びの動機

しかし現状では勤務先を探す際、自分の将来を考えて「ここでなら技術が学べる、こういう医院をつくるためにここで勤務したい」という開業目的の動機から、安定、安心、勤務しやすい環境で選ぶことが増えてきているように感じています。これは良い悪いではなく変化の一つです。その要因になっているのが開業資金、借入額、開業後の経営状況などが考えられます。

開業資金でいうと、以前は4,000万~5,000万円あれば建物が、テナントの内装も1,500万円ほどで完成していました。現在では建築費の高騰もあり1,000万~2,000万円ほど高くなってきました。また以前は医療機器もユニットは2~3台、CTはほとんどが未導入、デジタル機械、マイクロスコープ未導入、消毒滅菌機器もクラスB滅菌機や医療用洗浄機なども導入しないで開業することがスタンダードでした。しかし現在はユニットが3~4台、CTは当たり前、デジタルツールやマイクロスコープの導入率も高くなり、ハイクラスの消毒滅菌機器の導入も当たり前となりました。開業時、他の医院と比べて引けを取らない設備を導入することで、医療器械の費用が大幅に上がり、1,000万円ほど高くなってきています。そのため開業時の借入金額、返済額が大幅に上がり、開業意欲の減少に繋がってきています。

また開業後の経営、マネジメント、集患、求人、採用、さらには人口減少という様々な問題もあり、何十年とやっていけるのか、自分自身に合っているかを考え、開業に対して難色を示してきていることもあると感じています。

こうした状況から、今後の開業スタイルに変化が起きていくと考えています。もちろん今までのような開業スタイルはあり続けながらも、他の方法で開業することも選択肢として出てくると思います。それがM&A、共同型開業、グループ開業、採用強化型開業というスタイルです。

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開業スタイル①M&A

現在、50歳以上の開業医がとても多いことを考えるとM&Aというのは今後増えてくることは間違いないです。(厚生労働省 統計表 参照)特に歯科医院のM&Aというのは買収という意味合いが強いです。つまり閉院している医院ではなく、診療を続けている医院を買い取り、開業して医院を続けていくということになります。

M&Aというビジネス的な要素も出てくることでここにも問題が多々あります。一方で、医療という本質を考えた場合、歯科医療の存続は、地域や患者さんにとって、大きなことであることは間違いありません。やりたい地域、レセプト枚数、買い取り金額などを考慮すれば、安心して開業スタートができ、引き継がれる側から引継ぐ側にバトンを受け渡すことが可能になります。開業スタイルを考えた時にM&Aという形は今後、選択肢の一つとして考えられるでしょう。

開業スタイル②共同型開業

続いて、2人以上の歯科医師が共同で開業する共同型開業という形です。私自身も共同開業を支援した経験があります。通常では考えにくいことではありますが、やり方、考え方を工夫すると共同開業をすることが可能です。共同者との関係性はとても大切ですが、同じ方向性、目標を持っていればできることだと思っています。決めておくべきことも多々あります。

例えば、開業というのはどちらかが開設者、借入を起こさなければならないので、共同代表同士でどちらがそういった役割を担うのか決めていく必要があります。問題解決をしていけば、共同代表での開業はリスク分散もできること、そしてエンジンが2馬力となり売上の増大や集患、求人に対しての効果も大きいと考えられます。リスク分散、絆、繋がりを重要と考えている世代が今後開業することを考えると、このような形態の相談も増えてくることが予想されます。

開業スタイル③グループ開業

次にグループ開業というスタイルです。開業医の悩みを聞くと、ほとんどの方が「求人」と答えられます。現在の流れからすると、今後もその問題が変わることはないと考えられます。

歯科医院では歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、助手、保育士、管理栄養士、放射線技師、看護師が活躍しています。特に歯科医師、歯科衛生士の有資格者の求人、採用は最重要課題となっていることが多いのではないでしょうか。分院展開で医院規模を大きくしていくことも良いのですが、分院展開に合わない、望まない先生もいます。

前置きが長くなりましたが、グループ開業というのはお互いにメリットがあるように勤務医に投資、院長に投資してもらい勤務先のグループとして開業するというスタイルです。医院側のメリットは投資することで一定の収入とグループ医院というような形で、共同の勉強会やスタッフの交流、協力も可能です。信頼できる勤務医で同じ理念、方向性を持った方ならやることも同じなので多くの共有が可能です。開業する側もイニシャルコストが低くなり、なおかつ協力を得られる、何より自分の医院を持つことができるというメリットがあります。現在、クラウドファンディングで様々な事業が行われていることを考えると、このようなお互いにメリットがある開業スタイルは、今後、選択肢として出てきそうです。

開業スタイル④採用強化型開業スタイル

もう一つは求人戦略を重きに考えていく採用強化型開業スタイルです。開業する上で一番の不安は患者さんが来てくれるのかという点です。集患は大きなポイントであることは間違いありません。しかし、今後の社会変化を考えると人口は減少し、歯科医院の減少も明らかです。そう考えたときに開業準備やサポートをしっかりと受けて開業することで集患を行える可能性は高くなります。それを前提で考えていくと、一時の開業の問題よりも今後20、30年の問題を考えて、その部分を解決しやすい開業を行うことが大切です。それは求人、採用マーケットに強い立地選定開業です。今後の開業スタイルには、とても重要な要素だと考えています。

例えば、歯科衛生士学校に近い立地や臨床研修に選ばれるような駅付近の立地であることなどです。通える範囲は限られているため、多くの路線が集まっている駅や、近隣に複数の鉄道駅がある場所であれば通える範囲も一気に広まり求人に対してのマーケットも広くなります。こうしたことを考えて開業することは求人、採用においてとても大きなポイントになります。このような採用強化型開業という考え方も今後は必要になると思います。


これから考えられる開業スタイルをご紹介しましたが、お伝えしたいことは開業スタイルに答えはなく、「なぜ開業するのか、どういう医院を作りたいのか」という明確なビジョンを持ち、その想いをカタチにするための方法であるということです。

これからの開業スタイルが変わっても、きっと開業に対する歯科医師の想いは変わらないと現場で開業支援をしている私は考えています。

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著者:山本 裕次郎

Medical support partner株式会社 代表取締役

開業200軒以上の支援を行い、開業後の経営サポートも一貫して行えるコンサルティング会社。
今後の医院展開を明確に描き、漠然とした不安、悩みなどをパートナーとなり解決し、
診療に集中できる環境づくりを行い、一緒に考えて未来を見ていく。
事業として開業支援、内覧会、経営支援、採用サポート、採用のシステムの構築、事務長育成、代行など幅広く行っている。
月刊デンタルダイヤモンド2020年12月号より連載中。