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高まる矯正治療のニーズ|日本のマウスピース矯正事情は

患者ニーズの高まりや、クリニック経営面から一般歯科クリニックにマウスピース矯正を導入される先生が増えてきました。患者さんもネットで検索し、様々なマウスピース矯正を探して来院されます。今回は、日本のマウスピース矯正の実態と、クリニックで安全に取り入れるために心がけることをお伝えしたいと思います。

日本で使用されているマウスピース矯正

日本では大きく分けて下記の2つのマウスピース矯正が使用されています。

・日本の技工所で作成されるもの

・外資系企業によって海外で作成されるもの

日本の技工所で作成されるもの

日本で作成されるものは技工士法が適応され、歯科医師の技工指示書のもと製造されます。

古くは石膏模型をアナログセットアップし、マウスピースを作成していた時代がありましたが、最近は口腔内スキャナーを用いてデジタルセットアップを行うものが増えています。

さらに、3Dプリンターを院内に導入し、インハウスでマウスピースを作成するクリニックも台頭し、今後はさらに広くマウスピース矯正が普及していくと推察されます。

“手軽にできるプチ矯正に注意”

インターネット上の広告では、「手軽にできる」「費用がかからない」などと謳い、マウスピース型の矯正装置が販売されていることがあります。その運営母体はITベンチャーや医療とは別分野の企業であることも多く、医療機器として当てはまるのか疑問視されています。歯科医師が介在していない商品もあり、私たち専門家は患者さんに正しい知識を伝える責務もあるといえるでしょう。

外資系企業によって海外で作成されるもの

海外技工物は日本の技工士法に当てはまらないため、長年グレーゾーンとされていました。

またワイヤー矯正を主軸として行っていた矯正専門医にとっては、マウスピースで歯が動くことが受け入れがたいことだったのかもしれません。しかし、世界的なトップシェアを誇るアライン社は莫大な資本をかけて研究開発を行い、歯が動くバイオメカニクスや矯正力学に適したアライナー素材など多くの技術で特許を取得しています。治療結果向上を目的にフィードバックされる1000万症例以上のビッグデータ、グローバルマーケットの需要に合わせた最先端の生産拠点に比べて、どうしても日本の小さなカンパニーでは太刀打ちできないのが現状です。

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 クリニックで安全にマウスピース矯正を取り入れるために

大前提として、矯正治療の前には様々な検査・診断を適切に行い、治療計画を立案できる力があることが大切です。その上で、患者さんに適した装置を選択するべきだと考えます。

装置が何であれ、歯並びを変えるということは患者さんの人生を左右することだと、私たち歯科医師は重く受け止めなければなりません。

公益社団法人日本矯正歯科学会では、「矯正歯科治療は、正確な診断や精密な治療計画に立脚して行われるべき医療行為であり、誤ったマウスピース型製品の使用は予期せぬ大きな問題を引き起こす可能性があります」と注意を呼びかけています。

 私自身、9割以上をマウスピース矯正で行っていますが、外科矯正の適応やリンガル矯正の方が患者さんにとってメリットがあると判断した場合は、適切な医療機関をご紹介しています。ビギナーの先生におかれましては、マウスピースで治りやすい症例を線引きすることも時には大切です。どんなシミュレーションを作ったとしても治療がその通りになるかというとそうではありません。

マウスピースだけで治療が完結することは少なく、ワイヤーやブラケットでリカバリーを行い、顎間ゴムや他の追加装置を使用しながらゴールへ向かうこともよくあります。

継続的な知識の習得と経験の積み重ねを

「マウスピースなら簡単そうだし」という考えは非常に危険です。

ワイヤーの歯の動きとは別のマウスピース特有の考え方が必要であり、治療のアプローチはドクターによって様々です。したがって、地道に色んな先生の治療を学びながら経験を積んでいく、果てしなく長い旅路になるでしょう。

しかし、コロナ禍で矯正治療に対する患者ニーズが高まり、日々の臨床で包括的に矯正治療からアプローチする必要性も感じていらっしゃると思います。

時代とともに医療技術が進歩していることもマウスピース矯正をスタートするには追い風です。

マウスピース矯正を正しく理解し、多くの患者さんの健康と笑顔がもたらされることを切に願います。

次回は、歯科分野におけるデジタル技術の広がりについてご紹介します。次回の配信は10月18日です。

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著者:上田 桂子

インビザライン専門矯正歯科医

愛知学院大学歯学部卒業後、医療法人スワン会で11年間の勤務。その間に、ドイツ・ケルンにあるインビザラインドクターの第一人者シュープ医師のクリニックへ3年間にわたり何度も訪問しながらインビザラインを学ぶ。2016年にフリーランスとして独立し、クリニックなどでの勤務を経て、2021年にクリニックが抱える課題解決に向けたサポートなどを行う株式会社k-Crowd(奈良県天理市)を設立。現在は矯正診療の傍ら、セミナーや講演なども行う。