開業医のための医療経営マガジン

新着情報

【連載・第1回】笑顔で健康な生活をサポート|よい循環を生み出す理念経営

広島県の中心部にある「ほーむけあクリニック」。患者さんや働く仲間が集まり、よい循環を生み出している医療経営のヒミツを探る連載。初回は、横林賢一院長(43)の開業への想いを聞いた。

患者さんに安心を 「かかりつけクリニック」を目指す

ほーむけあクリニック(内科、小児科、皮膚科)は2017年に、広島県広島市中区に誕生した。外来診療、入院診療、そして訪問診療を行い、0歳から100歳過ぎまでの患者さんを診ている。

医師5人、看護師16人、介護士が7人、ケアマネ1人、作業療法士2人、臨床検査技師1人、事務が8人、そして、人と地域を繋げるリンクワーカーの合わせて39人のスタッフが働いている。

在宅医療は医師5人のうち皮膚科医を除く4人が担当し、このうち2人は在宅専門に、横林院長を含む2人は外来と在宅医療を半々で担っている。


クリニックの外来には特徴がある。外来用の診察室が7つある。

日本では、医師がいる診察室に患者さんが出たり入ったりする形が多いが、このクリニックでは、事前に患者さんに入室してもらい、まずは看護師が病歴や症状などを聞く。

その後、医師が入り、診察を行うという流れだ。そして採血や点滴などの処置が必要な場合は、診察室の中でそのまま行う。



こうした“アメリカ式”と呼ばれている診察室のあり方のメリットについて横林院長はこう説明する。新型コロナウイルスのような感染症が流行しているときも、すぐに隔離でき、また1歳未満の子どもや妊婦さんなど、人目を気にせず安心して診察を受けられること、そして、高齢の患者さんが診察後にゆっくり服を整えるなど、落ち着いて行動できる時間を設けられることなどだ。そして、診察で分からなかったことを看護師に聞くなど、患者さんの安心感にも繋がっている。

最初に看護師が問診することについては、「いきなり医師に話すのを緊張する人もいるが、看護師が初めに聞くことで、緊張を和らげ、看護師ならばと話せることもあるだろう」と横林院長は話す。そして、看護師が聞いたことをカルテに記入してもらうため、診察前に医師が病歴などを確認でき、診察時間の短縮や、事前に知りたいことを調べた上で診察室に向かえることもメリットだという。

「かかりつけ医」ではなく「かかりつけクリニック」という、スタッフみんなで患者さんを診るというイメージを持っているのが、ほーむけあクリニックの特徴の一つだ。

「町のお医者さん」を目指して

広島県出身の横林賢一院長は、「人と関わり、人を応援する仕事がしたい」と、教師か医師を目指し、姉が教師の道を歩んだことから、自身は医師の職を選んだ。

学生のころから「町のお医者さん」として多くの人たちに関わりながら『町ごと』みていく医師になりたかったという。


広島大学医学部医学科を卒業後、まずは救急医療を学び、医師としての基礎体力やどんなことにも対応できる力を養ってきた。福岡県の病院での初期研修時に出会ったアメリカの医師から「家庭医」の存在を聞き、自分がやりたいことは、「家庭医」という名前がついていることを知った。

そこから家庭医を目指し、東京に家庭医を養成するプログラムがあることを知り、一期生として家庭医療専門医となる。

在宅医療専門医も取得したのち、まずは家庭医療・在宅医療の文化を広島県でつくりたいと、2010年に広島大学で家庭医療後期研修プログラムを立ち上げた。2015年からはハーバード大学公衆衛生大学院に留学し、健康の社会的決定要因などに関する研究を行ってきた。


広島大学で家庭医の後進の育成に尽力し、多くの医師を世に送り出してきたことから、プログラムの運営や専攻医の指導をバトンタッチし、自身が長年目指してきた「町のお医者さん」になるため、2017年にクリニックを開業した。

「医師の友達」に気軽に会える場所を

ほーむけあクリニックの理念は「近隣に住む人たちが笑って過ごせるように健康面からサポートする」というもの。

このクリニックには、カフェが併設されている。

「病気やケガをしたときだけでなく、病気があっても無くても普段から健康相談にのり、人と人が関われる場所を」と作られたのが、地域のオープンスペース「Jaroカフェ」だ。


読書や子どもたちが楽しめるキッズスペース、そして勉強やワーキングスペースなど、地域の人たちが気軽に利用できる場所となっている。

さらに無料で健康相談ができる「まちの保健室」や、ベビーマッサージや離乳食教室、認知症についての相談や予防法を学べる認知症カフェなど様々なイベントも企画されている。



医療機関だと「かかりつけ」、飲食店だと「行きつけ」。
よく行く場所に、医療関係の友達がいるという感覚で利用してほしいと横林院長は話す。

一方で、サービスの提供者側にとっては持続可能な取り組みにしなければならないとの想いから、無料の健康相談は、医療スタッフの30分間の昼休憩の時間を利用している。地域の人たちも昼食を持参し、昼食を一緒に食べながら相談にのっている形だ。

「他の病院でこんなこと言われたが、先生はどう思う?」といった相談もあるといい、「何かあったら相談しよう」と思える場所になっているようだ。

繋がり創出・クリニックの理念を体感出来る場所

カフェでのベビーマッサージや離乳食教室などのイベントも好評だ。

旦那さんの仕事の都合で引っ越しをし、土地勘もなく子育てが大変な母親が、予防接種でクリニックを訪れた際のこと。横林院長は産後うつだと感じ、「カフェで離乳食教室をやっているので来てみませんか」と声をかけたという。教室に参加し、同世代の親や子どもと会うことで、同じことで悩んでいて、自分だけできないのではないと分かってほしいとの思いからだ。

利用する人たちにとっては、離乳食の作り方を学べると思って参加するが、本質的な狙いは繋がりの場を提供することなのだ。まちの保健室は来たい人が来る場所だが、こうした離乳食教室などのイベントは、必要なときに人と人を繋げる社会資源として行っている意味合いが強いという。


そして、このカフェの存在は、働くスタッフにとっても良い効果をもたらしている。

スタッフがイキイキと活動できる場であると同時に、地域の人たちの笑顔を健康面からサポートするというクリニックの理念がどういうことなのか、カフェでの活動や地域の人たちとの交流の中で実際に体験できているのだ。


ほーむけあクリニックでは、入職面接のときに特技を聞き、楽器が得意というスタッフがいたら、入院病棟のクリスマス会でサックスを吹いてもらうなど、それぞれのスタッフの強みを活かす場を設けている。

「そんな風に自分を表現していいんだ、人を笑顔にするってそういう意味なんだ」と感じ、職員たちにとって良い変化を生み出しているという。

事あるごとに口にし共有してきた経営理念

横林院長は「近隣の人たちの笑顔を健康面からサポートする」という理念を何度も口にしてきた。クリニックの理念をスタッフと共有する際に大切にしていることがあるという。それはターゲットを明確にするということだ。

「外来であれば〇〇小学校区の人たちが僕たちの近隣です。在宅医療はこのエリアが近隣になります」とイメージしやすいように伝えている

そして自分たちで考えて行動できる組織を目指している「ほーむけあクリニック」。

人の顔を浮かべ、「近隣の人たちに」という意識を繰り返し伝えることで理念を浸透させ、自分たちで考えて迷うことがあったときは、理念に沿っているかをベースに考えることを大事にしている。

この取り組みによって患者さんの笑顔につながり、それが結果として収益になる。近隣の人たちに貢献した結果、貢献度が収益という形で数値になっているというのが横林院長の経営の考え方だ。

この理念経営、現在はよい循環をもたらしているが順風満帆だったわけではない。

開業2年目で、横林院長はスタッフが相次いで辞める“人問題”に直面する。どのように乗り越えてきたのか、次回お伝えする。次回の配信は5月20日予定です。

著者:IGYOULAB編集部(イギョウラボ)

知りたいことや興味があること、そして地域医療に携わり先進的な取り組みを行っている先生方の
情報などありましたらぜひお寄せください。
取材を受けたい、記事で取り上げてほしいなどのご要望も受け付けています。
個別でのご相談やご要望は、お気軽に電話やメールでお気軽にお問い合わせください。

トゥモロー&コンサルティング株式会社
お問い合わせフォーム

#IGYOULAB #いぎょうらぼ #医業ラボ #イギョウラボ