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【連載・第1回】地域のニーズにこたえる診療所づくりを

人口動態や市町村の変化に合わせて変わる診療所経営に焦点をあて、医療法人北海道家庭医療学センター直営の2つの診療所の院長に地域の特性に合った医療提供や地域医療への想いについて聞く連載の第1回。向陽台ファミリークリニックの中島徹院長に地域の特性に合わせた医療の提供などについて伺った。

北海道の中部に位置する千歳市(人口9.7万人)にある「向陽台ファミリークリニック」。医師4人、看護師4人、事務職員4人、そして事務長とソーシャルワーカーの計14人で診療所を運営し、外来診療と訪問診療を行っている。このクリニックを率いるのが中島徹院長(38)だ。 

地域の役に立ちたいと志した医師

中島院長は、2009年に札幌医科大学を卒業後、江別市の市立病院で2年間、初期研修を行い、当初は開始したばかりだった総合内科のプログラムを受けた。その後、家庭医療専門医となるため北海道家庭医療学センターに入職、寿都町の診療所や室蘭市のクリニック、そして病院の病棟研修を受けた。

さらに、より進んだ家庭医療や、指導医や院長を目指す人のための北海道家庭医療学センターのプログラム「フェローシップ」を受け、旭川市のクリニックで2年間、研修を受けてきた。


その後、旭川のクリニックでさらに1年追加で働いていた時、千歳市の向陽台で、新規開院のクリニックの話が上がり、開院準備を経て、2017年から向陽台ファミリークリニックの院長を務めている。

高校生のころから地域医療に携わりたいと、医師を志したという中島院長。当時、ニュースで地域の医療を担う医師が足りていないと言われていた時期だったという。親の転勤が多く、北海道内を回っていた経験から、道内で“へき地”といわれる場所も多いことを知り、そうした場所に貢献したい、地域の中で何か役に立てることをしたいと考えたのが医師を志したきっかけだったという。

地域の特性・ニーズに合わせた診療を

向陽台は千歳市(9.7万人)の中心部から外れた人口約1万人の住宅街だ。

住宅街は時代に合わせてつくられることが多く、エリアによって新旧がある。向陽台の中にも、比較的新しく作られたエリアと、過去に開発されたエリアがあり、高齢化率が10%を切るエリアから、40%ほどと高い地域があるなど人口属性の違いがある。

向陽台にはかつて、医療機関は病院が1つしかなく、向陽台の住民の医療ニーズに応えきれない状況があった。その後、新しく開発された地域に診療所ができたものの、早い段階で閉院してしまった経緯がある。

そんな中で、「新しくクリニックを作ってほしい」と住民から声があがり、クリニックを誘致する委員会が立ち上がった。住民を対象にしたアンケートでは、「総合的に見られる医師」を望む声が多く聞かれたという。

そこで、総合診療医を育成している北海道家庭医療学センターに相談があり、向陽台ファミリークリニックが開院されることになった。

向陽台ファミリークリニックは、新しく開発されたエリアにあり、高齢化率が低いことから小児診療のニーズもある。一方で、この地域の公共交通機関はバスしかなく、交通の便があまり良くない、いわゆる“車社会”だが、高齢者など車を手放す人たちにとっては、気軽に市街地の総合病院を受診できないという側面もある。中島院長は、千歳市という大きな街ではあるものの、比較的“へき地”医療に近いものが求められる地域でもあると感じている。幅広い疾患に対応できることが求められているという。

次のような地域のニーズがある場所なのだ。

・小児から高齢者まで、幅広い年齢層に対応できる
・幅広い疾患に対して相談に乗れる

向陽台ファミリークリニック


クリニックができた当初は、千歳市全体をみても、訪問診療に力を入れている医療機関はなかった。訪問診療を中心にやっている隣町の診療所の医師が千歳市に来ていることもあったという。

車が必要な地域で、車を手放すことになった人たちにとっては、向陽台の中で生涯生きていくためには、訪問診療という選択肢は欠かせない。世の中で訪問診療のニーズが高まる中で、センターで学んできた訪問診療のノウハウを、訪問診療が求められていた千歳市で活かすことができたのだ。

地域の医療ニーズに答えていくことを最優先にしながら、限られた人員の中で、外来と訪問診療の割合を考えるなど、バランスを考えながら日々の診療にあたっているという。

IGYOULABを運営する医療コンサルティング会社「トゥモロー&コンサルティング」でも開業地の地域ニーズを、住民を集めての座談会やアンケートを通じて調べることがある。地域にあった医療を展開するときには実際に住民の声を集めてみるのも良いと感じた。

グループ診療体制(法人内の経営資源の共有)の強み

北海道家庭医療学センター直営の診療所(分院)は道内に他にもあり、法人内の医師やスタッフを共有することを可能にした。一般的な分院の医師やスタッフは他のクリニックに応援しに行くことがルール化されていないことも多く、強い機能だと言える。

「グループ診療」という体制ができていることから、診療を継続することが可能だ。

中島院長は、地域医療を守るために診療を続けられる体制が大きな強みだと感じている。
「各地で地域医療を担う人手が足りない現状がある中で、総合診療科の診療所の運営は一つの解決方法かもしれない」と中島院長は話す。

専門領域が限られていると、それ以外の相談に乗ることが難しいが、少ない人数でその地域の診療を見ていくという点では、総合診療医が果たす役割は大きいのではと感じている。

人手がないという運営問題から専門性の共有という点からも「人という財産の共有」を可能にしているのは質を下げない持続可能な経営だと思う。

こうした総合診療医の仲間が増えればという思いから、向陽台ファミリークリニックでは、医師らの研修の受け入れも行っている。

あとがき「経営資源を共有するグループ医療の未来」

今回は、中島院長に、地域の特性に合わせた医療の提供などについて伺った。向陽台ファミリークリニックがある地域では診療所がない空白の期間があり、地域の人から診療所を望む声があがり、この診療所の開院に繋がった。

住宅街の中でも地域の特性が異なり、求められるニーズも違う。そんな中で限られた人員でどう地域のニーズにどう応えていくか、これは、どの地域でも当てはまることではないだろうか。

そして、グループ診療の強みについてもお話しいただいたが、今後、地域の医療を守っていくためにも「チーム医療」というものが一つのカギになるのではないだろうか。

それぞれの地域で医師など医療従事者の確保の難しさ、従事者の高齢化など様々な課題を抱える中で、他職種との繋がり、そして診療所同士など「個」ではなく「複数」で維持していく地域医療のあり方を考えていく必要性を感じた。

そして、中島院長のお言葉にもあったように、地域全体をみる総合診療医の存在がますます大きくなっていく時代になるのかもしれない。

次回は中島院長が大切にしている他職種連携、そして地域の中の横の繋がりについて話を聞いた。次回の配信は11月25日予定。

著者:IGYOULAB編集部(イギョウラボ)

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