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【連載・第2回】地域に根付き地域医療を守り続けられる診療所へ

北海道家庭医療学センター直営の2つの診療所の院長に地域の特性にあった医療提供や、地域医療への思いなどについて聞く連載。

今回は千歳市にある「向陽台ファミリークリニック」の中島徹院長(38)が大切にしている他職種連携、そして地域の中の横の繋がりについて話を聞いた。

多職種と連携し支える地域医療

北海道の中部に位置する千歳市にある「向陽台ファミリークリニック」では、医師4人、看護師4人、事務職員4人、そして事務長とソーシャルワーカーの計14人で運営し、外来診療と訪問診療を行っている。

向陽台には、昔からある地域と新しく開発されたエリアがあり、クリニックでは小児診療から訪問診療まで幅広い年代の様々な疾患に対応している。

交通の便が良いとは言えない地域で、ここで住み続けたいと願う住民にとって訪問診療などを行うクリニックが果たす役割は大きい。

そんな中で中島院長が大切にしていることがある。それは「多職種連携」だ。

クリニックの近くには、サービス付き高齢者向け住宅や訪問看護ステーションなどがある。「地域医療は診療所だけで守ることはできない」と話す中島院長は「地域の中で多職種と連携しながら、地域のニーズに応えられる体制は作られている」と力を込める。


約1万人いる地域にクリニックが1つという状況で、患者さんの数が多くなってきていることも事実だ。中島院長は、待ち時間が長くなってきているので、さらなる体制づくりの必要性を感じている。この状況を改善しようと、現在、職員の話し合いが続いているという。

向陽台ファミリークリニックは会議が多い。より良い質を目指しながら効率を高めようとするには日々の改善が必要不可欠になる。このクリニックには、「委員会システム」がある。

医師や看護師、事務職員といった職種ごとに課題解決に向けて考えていく会に加えて、クリニックの中の診療から整えていく「診療システム委員会」、診療所の見た目やHPの整備など対外的な部分を整えていく「美化委員会」などが存在していて、日々の課題を洗い出し、職員みんなで話し合いながら改善策を考えているという。

開院当初から、中島院長は、話し合いを大切にする組織作りに取り組んできた。それぞれの職員の強みを活かす組織作りに力を入れてきた。

例えば、新型コロナウイルスの対応においても、近くの高齢者施設でクラスターが発生した際に、自分たちができることを考え支援体制を作り、医療従事者の感染対策や、地域の人たちに広げないための対策を考え体制を作ってきたこともあった。

ポイントは「役割ごとに見える化」である。それぞれの職種からみた診療所の課題を見える化し、共有しながら、改善に努める。そして職員一人一人が、診療所を作り上げる当事者であるという意識を浸透させていく。

職種ごとに「見える化」するため、すべての職員が議題を考えることになる。こうした積み重ねが診療所の底上げに繋がっていくのだろう。

地域に参加し、横の繋がりを大切に

もう一つ、中島先生が重要視していることがある。それが「地域との繋がり」だ。

例えば、コロナ禍以前に行われていた地域の夏まつりに参加したときのこと。中島院長が地域の人たちと片づけを行っていた際に、転倒したり、指をはさんだりした地域の人に応急処置をした。地域の人と「こういう症状に対して、このような対応ができます」などという会話もあった。

地域と交流を持つには「地域に参加する」のが一番近道である。実際、日々の診療があり大変かつ勇気が必要なことだが、地域ニーズの答えは常に現場にあるのだと思う。

地域の人から「まだクリニックに行ったことは無かったけれど、今後行ってみる」という声が聞かれたという。

地域の中に自ら入ることで、顔が知ってもらえると、こんな風にクリニックを利用できるのだと知ってもらえ、なじみの場所になるきっかけになるのではと中島院長は話す。

地域連携にはイメージの共有が大切

前述した通り、中島院長は、高齢者複合施設や訪問看護施設などと連携しながら地域医療を守ることを大切にしている。

さらに、地域の中にある地域医療や介護を考える組織や、周辺の3つの市にまたがる在宅緩和ケアを共に進める仲間たちとも繋がり、地域全体で共に考えることを大切にしている。

「地域全体として医療・介護が底上げされていく、みんなで足並みを揃えて地域力を上げていくことができれば」と中島院長は語る。

中島院長は、地域力が上がることで、地域での常識が徐々に変わっていくと考えている。

このクリニックが出来るまでは、千歳市で訪問診療が一般的ではなかった。訪問診療を利用する選択肢がなく、入院するしかない、療養場所が限られるなど困っていた人もいたことだろう。訪問診療を行うクリニックを住民の人たちが認識し、活用してくれることで、そこから口コミで広がり一般的になっていくのだ。

その時に、提供していく自分たちの中で連携がとれていなかったり、担当者が他の職種が何をやっているか分からなかったりすると、利用者が期待外れだったと感じてしまうことにも繋がりかねない。

中島院長は、携わる人たち全員に、訪問診療であれば、こういうチームで動くなどというイメージがあることが大切だと話す。

分かりづらい時こそ「完成形のイメージを何度も話し共有する」ことで、完成形に近づいていき、良いクチコミが広がっていくのだ。

そのためにも他職種の横のつながり、顔が見える関係を築いていくためにも、普段からの交流を大切にしているのだ。

持続可能に医療を提供していくために

今後も地域の患者さんの様々な相談に乗りながら、気軽に相談できる診療所を目指していくと語る中島院長。診療所で診られない疾患だったとしても、専門の診療科につなぐことができるので、まず相談してもらえる場所になりたいと話す。

そして地域のニーズが高い訪問診療を千歳市全域で続けていきたいと話す。

千歳市の医療や介護を良くしていこうと考える仲間たちが多くいるというこの地域で、繋がりを大切に、その一員となって活動していきたいという。

診療所の中でも、自分たちの立ち位置、この地域の中でどんなことが求められているクリニックなのかを浸透させることが大切だと考えている。そのための日々の声かけも欠かさない。

「クリニック全体で、地域全体で地域医療を行う」

持続可能な医療提供のためには、個人に依存するのではなく、クリニック全体で、地域全体で行っていくという意識の大切さを話しているという。

地域と繋がり医療を提供していく、こういう地域医療の一つのカタチを伝えられればと、中島院長は締めくくった。

あとがき「発信と受信で創る地域医療」

今回の取材で思ったことは院長が「何をしたいか」を明確に発信しているところにあると感じた。

時代が大きく変化している現代では「揃えてから発信」では叶うスピードが遅い。叶えるためにGOALや理想を伝え、皆で力を合わせて創り上げていく時代だと思う。

その為に発信するビジョンがあり、それを伝える為に出向くことの大切さを感じた。

また、地域で何が求められているのかを把握するためにも地域に出ていく「受信」の大切さを感じた。

顔が分かる関係を構築していくこと、そして地域医療を守りたいと同じ志を持つ仲間や他職種の人と繋がることで、地域医療のあり方など新たな方向性も見えるのではないだろうか。

訪問診療など患者さんに満足してもらえるサービスを提供するために、しっかりとした体制づくり、携わる人たちの共通の意識づけ、どのような流れで行うかという「点」ではなく「線」で物事を考えることの大切さを感じた。

まずは、地域のニーズを診療所全体で共有し、よりよい医療提供のために、職員のアイデアや意見を取り入れていく。さらにその範囲を他職種、地域に広げ、様々な人と繋がることで今まで見えなかった視点も出てくるのではないだろうか。連載記事、次回は12月9日(金)配信予定です。

北海道家庭医療学センターHPはこちら

向陽台ファミリークリニックHPはこちら

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インタビューもしくは寄稿の形でお願いしております。

ご自身の経験や考え方をアウトプットすることで、ご自身の頭の整理もでき、さらなる組織の成長にも繋がるのではないでしょうか。そして、職員のみなさんの発信によって、自身の役割を再認識することで、やりがいを感じる一つのきっかけにもなると考えています。

ぜひみなさんのお考えや取り組みを教えてください。みなさんの取り組みを共有しながら、地域医療の底上げを目指していければと思います。ご協力いただける方は下記までご連絡下さい。

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著者:IGYOULAB編集部(イギョウラボ)

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