いくら貯めたら開業できるのか?
開業を意識し始めた先生からいただく質問のベスト5にはお金の質問が必ず入ります。
開業するにあたり地域や科目や開業形態によって大きく変わりますが、良くある質問はこちらです。
自己資金はどれくらい必要か?いくら借りられるのか?どこから借りたほうが良いのか?
金利は?年数は?保証人は?死んだらチャラになるのか?などなど。
目次
自己資金は生活のために貯めておく
10年以上開業支援をしていても、時代のトレンドに左右されない意見もあります。
お金と税金のプロである税理士に多くお会いするのですが、その半数以上は「自己資金は事業資金にせず生活のためにとっておいてはどうですか?」と開業する先生に伝えている場面に出会います。
理由を聞くと経営者の私も納得の説明でした。
“人は生活のお金が無くなると想像以上にメンタルがやられます。
よく聞かれるのですが借りたお金は教育資金や生活費に使えません。
心と生活に余裕があってこそ、経営者は頑張れますよ”
事業用の自己資金を用意してもあてにしない
これは最終的に経営判断の話ですが、まだ慣れない経営で大切な戦略のひとつが「リスクヘッジ(損失回避)」です。
うまくいかない時、チャンスだと思った時、そんな時にお金が必要になります。
最初から上手に持っているお金を予定通りに分配できることは稀です。
そこでこんな考え方があります。
お金は借りられるならたくさん借りる。
もし、生活費を確保した上で自己資金に余裕があるなら事業用として考える。
しかし、すぐには使わない。
借りたお金で何とかしようと考え、軌道に乗ってしまえば、事業用と考えた自己資金で返済の前倒しをする。
多少の金利はかかりますが、これがリスクヘッジ代だと考えます。
貯金はいくらあれば安心なのか?
開業前の勤務医の場合、医師であれば40代前半で約1,200万円、歯科医師であれば30代前半で700万円くらいかもしれません。家族構成によって必要なお金は変わりますが、次のように考えてみることをお勧めします。
8カ月間耐えられる貯金額
開業時の売上推移は開業初月、翌月は内覧会の影響もあり患者数が多い状況です。
多くの場合、3カ月目から患者数が下がります。地域で興味を持っていただいた患者さんを診きってしまうからです。
(これは別件ですが 3カ月目以降を意識した戦略を内覧会から1、2カ月目までやることが大切です)
診療報酬は2カ月後に入金されるので、患者数が減った3カ月目に貯金通帳にお金が入るので、患者数に違和感を抱きながらも、そこまで不安はありません。
ところが4カ月目に2カ月目の入金があっても2カ月連続で患者数が伸び悩むと、さすがに焦りが出ます。
そこで広告など手を打ち始めます。現在、WEB広告などが主流ですので効果はすぐ現れます。
結局、試行錯誤して緩やかに右肩上がりに戻るのが6カ月目になります。
しかし、診療報酬は2カ月後に入金されますので、開業6カ月目+2カ月後で8カ月目からようやく右肩上がりの貯金通帳になるわけです。
つまり、半年以内でV字回復する意識さえあれば生活は守られるというわけです。
貯金0円で開業される先生も少なくない
大げさな話ではなく、貯金残高が2桁以下で開業される先生はいくらでもいます。
開業時にライフプランナーさんや税理士さんと事業計画を作る時に財産整理をするのですが、「私、貯金ありませんから」と言われる方は本当にありません。堂々としたものです。
ですが、実際に銀行の融資額8,000万円を獲得して開業され、現在では多くの貯金をされている先生もいらっしゃいます。
ここまで話しておきながら、私個人の考えとしては自分の開業スタイル(やりたい医療や経営)に自信があれば、融資を引っ張るということに力を注ぎ叶えていくこともできます。
これも一つの経営者スキルかもしれません。
開業する前にはライフプランニングを
ここでは長くご説明しませんが、私は開業前にファイナンシャルプランナーなどにライフプランニングをしてもらうことを強くお勧めしています。
上記の様に8カ月耐えられる生活費と言って、すぐに算出できる先生はとても少ないです。
自分たちが普段、いくら支出しており、必ず必要な支出はいくらあれば大丈夫なのか?など経営者にとって大切な「赤字のボーダーライン」を把握していないことがあります。
今回は生活費のボーダーラインが大切ですので、家賃、教育資金、ローン、食費など必ず必要なお金をライフプランニングで把握しておくことをお勧めします。
ファイナンシャルプランナーは主に生命保険を販売されている方が持っている資格です。
私のお勧めは、やはり医療のことを理解されている方です。
2カ月後に入金や、開業資金、お子様の教育資金など、一般的ではないことが実はたくさんあるのが医療業界です。
ぜひ、ご参考にしてください。