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優秀な職員をモンスター化させないために

今回は、他業種での実績がある・キャリアが長い・高学歴など優秀な経歴を持つ
いわゆる“ハイスペック人材”を採用したときの失敗談についてです。

本来ハイスペックな職員は、入職してもらえると有難い存在なはずです。
特に開業したばかりの頃は、院長先生自身も分からないことが多いので、相談相手として過去に主任をやっていたようなマネジメント力のある人に魅力を感じるかと思います。

今回は、このハイスペック職員の扱いを間違え、モンスター化・クラッシャー化してしまったお話です。

ちなみに“モンスター化”とは、職員が診療所をのっとってしまうようなことを指します。

例えば、他の職員が、院長先生よりもハイスぺ職員の指示を優先してしまったり、決定権をハイスぺ職員が持つ、等が挙げられます。

ハイスぺ職員が院長先生と対立してしまうと、院長先生 VS 職員 という構造を持ちだしてくることもあります。

また最悪な場合は “クラッシャー化”することです。
クラッシャー(crusher)は、本来石などを砕く機械のことを指します。それを踏まえて就労環境の中では、組織の結束を破壊してしまう存在という意味合いで使われます。

結果的に、院長に共感している他の職員たちは、ハイスぺ職員と一緒にやっていけないと思うことが増え、職場を去っていくのです。

しかも、このクラッシャー化したハイスぺ職員は、自分の働きやすい労働環境を自ら作り上げていることもあり、そうそう辞めません。
その結果、新しい人を採用してもまた辞めてしまうという悪循環が続いてしまいます。

それでは、このモンスター化・クラッシャー化した理由について考え、そうならないための方法をお伝えさせていただきます。

 

なぜハイスぺ職員はモンスター化してしまったのか? (動画 3:00~)

【原因1】

ハイスペック職員からの質問に、院長先生が明確に答えられなかった。

(例)
ハイスぺ職員
「患者さんの待ち時間に対して~と思うのですが…先生の考えをお聞かせください。」

院長先生
「ん~わかんないなぁ。任せるよ。」「他の医院さんは何やってる?」「どうするのがいいか調べてほしい」
など曖昧な回答をしてしまった。

ハイスペック職員は、自分なりの仕事観であったり、医療観を持っていることが多いため、疑問を持ったことに対して明確な理由が知りたいと思っています。そして、今ある問題点に対してゴールを指示してほしいと思う傾向があります。

そのため、もし院長先生の回答に明確な判断基準がなく、軸がブレていると感じた場合は、ますます疑問を感じてしまいます。

もちろんハイスペック職員も立場をわきまえていますから、その後しばらくは「~の場合はどう思いますか?」などと色々な質問や提案をしてきます。

しかしそれでも、院長先生が質問に答えられないことが続いてくると、“どうせ院長先生は自分の価値基準持ってないから。”と聞く前に思うようになってしまいます。
結果的に、自分の価値基準で行動していいと勘違いするようになってしまいます。

これを防ぐためには、院長先生自身の明確な価値基準を持つことが重要です。
質問に即座に答えられないようなときには、考える時間をつくり、後日明確な価値基準を伝えることも大切だと思います。

  

【原因2】 (動画 4:42~)

他の診療所の医師・歯科医師の技術の高さを引き合いに出してきたときに、院長先生が考える医療理念を伝えきれなかった。

(例)
ハイスぺ職員
「~先生のところでは、~という技術を用いている。」「~先生は、~を導入している。」「~先生は学会発表をしている。」「~先生に会いに行きました。」「WEBセミナーを見ました。」

このように他の先生の専門性を引き合いに出されたときには、自分の診療所とその先生の考える医療理念の違いをきちんと伝えることが大切です。

「そうだね、あの先生は確かにすごいね。でもここでは、できる医療資源を生かすのが、我々の義務だと思っている。私が私でできることをやろうと思うのがこの診療所の医療理念だよ。」
とはっきり伝えることで、他の先生との医療理念の違いを分かってくれるかもしれません。

そうでないと、ハイスぺ職員は「うちの先生って技術低いから」と周りの職員に言うようになってしまう可能性もあります。また、自分のボスである院長先生をリスペクトしなくなってしまうようなことが起きてくるので、返答内容には注意が必要だと思います。

 

【原因3】
ハイスぺ職員がド正論で理詰めしてきたときに、自分の価値観を伝えきれなかった

(例)「患者さんの集め方に関して~こうするのはいかがでしょうか」「売上の上げ方を~こうするのはいかがでしょうか」

トップである院長先生は、人・お金・マネジメントなど色々なことを考えたうえで経営をしなければいけません。
集患や、売上の上げ方にもこだわりがあります。
そのため、ハイスぺ職員の提案は正論ではあっても院長先生の価値観や現実にそぐわないこともあります。

相田みつをの格言にもある“人間だもの”の一言に集約されているように、開業した時の価値観やこだわりを曲げてまで、提案を飲む必要はないと思います。

正論で理詰めされたときに、
「わかるわかる、でも人ってそう簡単にできないじゃん。あなたの言っている論理は確かに正しいかもしれないけど、今は現実的でない。現実的になったらやってみてよ。」

と伝えてみるのもいいかもしれません。

まとめ

ハイスペック職員は確かに優秀でいいのですが、院長先生の対応によってはモンスター化・クラッシャー化してしまうこともあります。

もし優秀な職員を採用しようとしている院長先生がいらっしゃいましたらご参考にしてください。

詳細は、以下の動画をご覧ください。この動画を通して、職員のモンスター化を防ぎつつ、職場を良くする手がかりになればと思います。