育児・介護休業法改正 段階的に施行へ|男性育休制度が新設
育児・介護休業法が改正され、2022年4月から段階的に施行されます。
事業主には育児休業を取得しやすい環境の整備や、育児休業制度に関することや取得の意向を確認を個別に行うことなどが義務付けられています。そして、新たに出生時育児休業(産後パパ育休)が創設されます。改正のポイントを踏まえながら、診療所の就業規則などを見直してみてはいかがでしょうか。
育児・介護休業法が改正された背景とは
約5割の女性が出産・育児を機に退職していて、妊娠・出産を機に退職した理由を見てみると「仕事を続けたかったが両立の難しさで辞めた」という回答が最も多くなっています。
6歳未満の子どもを持つ日本の夫が家事や育児に携わる時間は1日当たり1時間程度と世界的にも低水準。夫の家事・育児の時間が長いほど、妻の継続就業割合が高いことも明らかになっています。
育児休業の取得率を見てみると、80%以上となっている女性に比べて男性は、年々上昇しているものの、約13%と低くなっています。女性の9割が6カ月以上取得している一方で男性の8割が1カ月未満という現状です。
育児などのために休暇の取得を希望していた正社員の男性のうち利用した人は2割以下、育休制度を利用しなかった理由として、「収入を減らしたくなかった」「職場が取得しづらい雰囲気だった、会社や上司の理解がなかった」などといったことが多くなっています。(厚生労働省などが公表している調査結果より)
出産・育児などによる離職を防ぎ、男女ともに仕事と育児を両立できるようにするため、柔軟な育児休業の枠組みをつくり、育児休業を取得しやすい環境整備などを目指し、法律が改正されたのです。
育児・介護休業法の改正ポイント
今回の法改正では、育休を取得しやすい雇用環境の整備などが事業主に義務付けられ、2022年4月から段階的に施行されます。施行される順に沿って、ポイントをまとめました。
【2022年4月施行】
①環境整備、個別の周知・意向確認の義務化
育休を取得しやすい環境整備では、短期だけでなく1カ月以上の長期の取得を希望する労働者も希望通り取得できるよう、事業主が配慮すべきことが示されています。
そして事業主は、
「研修の実施」
「相談窓口の設置」
「自社の取得事例の収集・提供」
「制度と育児休業取得促進に関する方針の周知」
上記のうち、選択した措置を講じる必要があります。なお、複数講じることが望ましいとされています。
なお、厚生労働省では、環境整備や個別周知、意向確認に活用できる書面の例も公表していますのでご活用ください。詳しくは下記をご覧ください。
そして、本人または配偶者が妊娠・出産を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度などに関することや取得の意向を確認を個別に行うことが義務付けられました。
周知すべき内容は
・制度
・申し出先
・育児休業給付
・社会保険料の取り扱い
上記の4点についてです。面談や書面、電子メールなどの方法で周知することとしています。
②有期雇用労働者の育児休業取得要件の緩和
これまで有期雇用労働者が育休を取得するには、以下の2つの要件がありました。
(1) 引き続き雇用された期間が1年以上
(2) 1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでない
今回の改正では、(1)の要件が撤廃され(2)のみとなり、無期雇用労働者と同様の取扱いになります。
【2022年10月施行】
①育児休業の分割取得可能へ
従来の育休制度が改正されます。
これまで原則として分割取得は出来ませんでしたが、改正にともない、分割して2回取得することが可能です。そして、これまでは育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定されていましたが、育休開始日が柔軟化されます。
②産後パパ育休の創設
男性の育休取得促進のため、出生時育児休業(産後パパ育休)が新設されます。これは育休とは別に、出生後8週間以内に4週間まで取得できるものです。
申出期限は一部を除いて原則2週間前までで、分割して2回取得することができ、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することも可能になります。
【2023年4月施行】
①育児休業の取得の状況の公表の義務付け(大企業)
常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主に対しては、育休取得状況の公表が義務付けられます。
育休制度の改正や、産後パパ育休の新設によって、育休取得が柔軟にできるようになりますので、職員一人一人に対応できるよう、就業規則の見直しなど体制づくりを進める必要があります。
詳しくは厚生労働省のホームページをご覧ください。