不妊治療と仕事との両立へ 働き続けられる職場づくりを
不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は約18%で、夫婦全体の約5.5組に1組の割合となっています。このうち、仕事と両立している(両立を考えている人も)の割合が約53%、両立ができなかったという人は約35%という調査結果があります。
企業の支援制度などの実施状況を見ると、支援を行っている企業は3割にとどまっていることも明らかになっています。
厚生労働省では、不妊治療と仕事の両立ができる職場づくりに向けて様々な取り組みを行っています。
仕事と不妊治療の両立難しく16%が離職
厚生労働省では、2017年度に、不妊治療と仕事の両立に関する調査の一環で、企業や労働者にアンケートを行い、その結果をまとめています。
不妊治療をしたことがあると回答した人のうち半数以上が仕事と両立しているものの、16%は退職、8%が雇用形態を変更していることが明らかになりました。
不妊治療と仕事を両立している人のうち、両立が難しいと感じた人の割合は87%でした。その理由として、「通院回数が多い」「精神面で負担が大きい」「待ち時間など通院時間にかかる時間が読めない、医師から告げられた通院日に外せない仕事が入るなど、仕事の日程調整が難しい」といったことが多くなっていました。
両立できずに仕事もしくは不妊治療をやめた、または雇用形態を変えた主な理由として「精神面で負担が大きいため」「通院回数が多いため」「体調、体力面で負担が大きいため」といったものが多くなっています。
また、不妊治療と仕事を両立する上で組織に希望する制度については、「特に希望することはない」という回答が最も多かった一方で、「不妊治療のための休暇制度」「柔軟な勤務を可能とする制度」「有給休暇を時間単位で取得できる制度」「有給休暇など現状ある制度を取りやすい環境作り」が多くなっています。
労働者の中には、治療を受けている事を職場に知られたくないという人もいて、職場内で、不妊治療の認識が浸透していないことも指摘されています。不妊治療を受けながらも安心して働き続けられる職場の環境づくりが求められています。
中小企業事業主への助成金も
従業員の不妊治療と仕事の両立をサポートする事業主を対象にした助成金もあります。
①働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
これは生産性を向上させ、労働時間の短縮や年次有給休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するための助成金で、不妊治療休暇制度を導入したい場合に活用することができます。(仕組み作りのための費用の一部が助成されます)
助成額は最大で490万円となっています。
対象となる取り組みは
▼労務管理担当者に対する研修
▼労働者に対する研修、周知・啓発
▼外部専門家 によるコンサルティング
▼労務管理用機器の導入・更新
▼労働能率の増進への設備・機器などの導入・更新 などです。
支給の対象となるには、定められている4つの「成果目標」から1つ以上選択し、その達成を目指して取り組む必要があります。その目標の一つに、全ての対象事業場において、特別休暇(不妊治療のための休暇など)の規定を新たに導入することと定められています。
交付申請期限は2022年11月30日までで、担当窓口への持参、もしくは郵送で受け付けています。(支給対象事業主数は国の予算額に制約されるため、11月30日以前に受付を締め切る場合があります)
詳しくはこちらをご覧ください。(厚生労働省HPより)
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)のご案内.pdf
②両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)
これは不妊治療と仕事との両立に向けた職場環境の整備に取り組み、不妊治療のための休暇制度や両立支援制度を労働者に利用させた中小企業事業主を支援する助成金です。労働者が制度を利用した場合に活用することができます。
以下の制度を導入し、利用させた中小企業の事業主が対象です。
▼不妊治療のための休暇制度
▼所定外労働制限制度
▼時差出勤制度
▼短時間勤務制度
▼フレックスタイム制
▼テレワーク
申請には、両立支援担当者の選任や、不妊治療両立支援プランの策定などが必要で、支給額は28万5000円(生産性要件を満たした場合は36万円)となっています。
両立しやすい環境整備に取り組む企業の認定制度開始
4月から厚労省では、不妊治療と仕事との両立に取り組む企業を認定する制度を新設しています。
仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組んでいる企業を認定する「くるみんマーク」などの認定を受けた企業が、不妊治療と仕事との両立にも積極的に取り組み、一定の認定基準を満たした場合に、「プラス」認定を追加するものです。
認定基準は以下の通りです。
①不妊治療のための休暇制度に加えて、半日又は時間単位の年次有給休暇やテレワーク、時差出勤などの制度を設けていること
②両立の推進に向けた方針を示し、措置の内容とともに労働者に周知していること
③両立に関する研修や、理解促進に向けた取り組みを行っていること
④不妊治療を受けている労働者からの仕事との両立に関する相談に応じる担当者を選び、周知していること
両立支援に向けた様々な取り組み
また、厚労省では、
▼不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのための事業主向けのマニュアル
▼不妊治療を受けている本人や、上司、同僚向けの両立サポートハンドブック
▼不妊治療を受けている従業員と企業をつなぐツール「不妊治療連絡カード」
をHP上で公開しています。
さらに、過去の「不妊治療を受けやすい休暇制度等導入支援セミナー」や「不妊治療と仕事の両立に関するシンポジウム」を動画で視聴することができます。(無料)
視聴URLは下記に表示の厚労省のページで紹介されています。
ぜひ、こうしたものを活用しながら、誰もが働き続けられる職場、様々な働き方への理解ある職場づくりに向けて取り組んでみてはいかがでしょうか。
詳しくはこちらをご覧ください。