スマホがもたらした医療経営の逆転現象
この数年で歯科の開業医としての課題は患者数という「集患」の課題から、「人に関わる」課題に大きく変わりました。
弊社は「集患」と「人財」を二本柱としてコンサルティングしている業態です。10年前、集患と人財の問い合わせが8対2でしたが、現在は3対7と逆転しました。
何がきっかけで歯科の課題が変化したのか
一体、この数年の何がきっかけになったのだろうか考えてみました。
まず人のトラブルを掘り下げてみると、その多くが常識の食い違いです。「当たり前」が違うため、今まで暗黙の了解でできていたことができずに不和が生まれます。
人は予測することで効率的に社会生活をしていると言われています。「きっとこうなるだろう」がズレてくると、当然うまく行きません。
では、この当たり前がなぜ変わったのでしょうか。
私は意外にも「スマートフォンの登場が大きく影響をした」という考え方に共感しています。
今まで情報が少なかったので、「当たり前」を作りやすかったかと思いますが、今ではSNSを通じて「様々な人の当たり前」に触れることができるようになりました。
よく勉強して良い大学に行くと良い人生を送れる。そうではない方法とSNS上で気軽に出会うことができます。
動画でその人のやり方や考え方、日常も知ることができるようになりました。
それが価値観の多様化のきっかけだと考えています。
まず価値観の多様化時代を身近にしていく
では、「歯科業界が人のトラブルだらけか」というとそうでもありません。いち早く業界を理解し、逆手に取った歯科医院が逆に「人気、活気」を集めています。
大切なことは、今起きている時代の状況に合わせてスピーディーに柔軟に対応していくということだと感じています。
例えば、5年ほど前からホワイト企業という言葉が当たり前になってきました。今では就業規則や労務整備が当たり前であり、逆に整備されていないところが悪い意味で目立っています。
対応している院長と対応していない院長それぞれに質問をすると、不思議と似て非なる答えが返ってきます。
「僕の周りではみんなやっているよ」か「僕の周りはみんなやっていないよ」という答えです。
つまり、労務についていち早く整備している敏感な院長の周りには同じような感覚の院長が集まり、逆に労務整備はやっていないと答える院長の周りには、やっていない院長がいるわけです。
これは理にかなっているのかもしれません。
人は自分の環境に左右されやすいので、どのような環境に身を置いているかで自分の常識が変わるのは納得がいきます。
この理論を私は大切にしていて、自身の経営について、時代に敏感な経営者仲間と情報交換することを重視しています。
まず、価値観の多様化時代を受け入れるには、価値観の多様化に敏感な仲間と情報交換をすることなのかもしれません。
次の時代に標準化される価値観とは?
今回のテーマは10年先についてですが、今が時代と時代の変革期にあると感じます。10年先はきっと標準化、平準化されている少し落ち着いた時代になるのかもしれません。
つまり、時代にあったことをしていなければ、ネガティブに働くということです。
今、人のトラブルと言う点で考えると前述したとおり「常識のすれ違い」への対応です。「価値観や常識」について考え直すことが大切になると思います。
これはどういうことかというと、「どんな常識が正しいか?」ではなく、「私たちの歯科医院で大切にする価値観や常識はこれだ」と定めていくことだと考えています。
多様化時代だからこそ、ひとりひとりに様々な一面があって良いと思います。家族といる時の自分、友人といる時の自分、職場での自分はそれぞれ違うかと思います。
いずれ副業や兼業も当たり前になり、そうなれば、一層、当院での一面が大切になってきます。
そのために必要なことは、「当院では何を大切にするか」を改めて決めていくことではないでしょうか。そして、それがハウスルールや風土だと定め、守ってもらう習慣化が必要になると考えています。
次の主軸となるZ世代の感覚を取り入れる
10代から27歳くらいまでをZ世代と言われており、スマホネイティブな世代です。若者世代と一括りにするには惜しい非常に重要なポジションを担っている世代です。
一般的にSNSで情報収集をし、人とのつながりを大切にしている、簡単にいうと意外と真面目な世代でもあります。いずれこの世代が従業員の中核を担い、患者さんとしてもコアな層になっていきます。
Z世代が注目されている理由には、昭和・平成という人口増加時代と人口減少時代の大きな価値観の違いを持っているのもありますが、高齢者も使っているライフラインであるスマホの文化を担っている点が大きいと思います。
人財の専門家としてもZ世代が何を考えているかを研究することは、次代への投資だと感じています。こうした時代の変革期こそ半歩先に対して柔軟にまずは情報を取り入れるということを欠かさないようにしていきたいと思います。