何を継ぐ？なぜ継ぐ？事業承継はまず意思疎通から｜互いに共有しておきたいこと　開業Q＆A

「事業承継をするとき、親と何を話した方がいいですか」という質問をいただきました。

すでに開業されて、親と一緒に働いているというケースや、現在跡を継ごうか迷っている先生方のご質問をもとにお話しさせていただきます。ご参考にしてください。

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継ぐ側と継がせる側で共有したいこと

弊社がコンサルティングを行う上で、継ぐ側と継がせる側の両方にお伺いしていることがあります。それは「先生、何を継ぐんですか？」ということです。

「何を継ぐのか」これは非常に大事だと考えています。

昔から自分は親の診療所を継ぐと思って受験勉強をしてきた、継がせるために土地建物を買ったと親に言われ続けてきたなど、「継ぐもんだと思っていた」と言われる先生が多いです。

事業承継をする上で、思い込みで進めていくと、継ぐ側と継がせる側の互いの気持ちや目的が違うことがあるので、目標が異なることが出てきます。そうすると、人材育成やお金の使い方などにおいて、話が食い違ってしまう可能性があります。

そうならないためにも、「こういう思いで継がせたい、こういう部分を継ぎたい」というように「何を継ぐのか、何を継がせたいのか」を互いに明確にしていただくことが大切になると思います。

何を継ぐか　 損得と思いのバランスを

例えば医療法人を継ぐことを検討する場合

・「持分なし」の場合は、法人の財産を継がせたい
・先祖代々受け継がれている土地や法人なので続けたい

などといった思いがある先生もいらっしゃるかもしれません。事業承継をする上で人の思いがそこにはあるのです。

さらに、土地や建物を有効活用したいということで継がせたいと考えることが多いかと思います。

ただ、有効活用するのであれば、診療所でなくてもいい場合もあるかもしれません。

例えば流行りそうなパン屋にする、定期的に収入があるマンションにすることなども考えられます。その資金をもとに、よりよい場所に診療所を移転した方がプラスに働くこともあるかもしれません。

このように、土地・建物を継ぐとしたら、「思い」を重視するのか、「損得」を考えて判断するのか、この辺りが重要になってきます。

また、順調な経営を継ぐことは大きなメリットです。０から順調経営に持っていくには時間がかかります。私は「M＆Aはお金で時間を買っている」とよく言いますが、順調経営を継ぐのは、軌道にのるまでの時間を買うことになりますので、メリットが大きい経営戦略の一部だと考えています。このように「順調経営やお金を継ぐ」ことはプラスに働き、失敗するリスクが少ないと考えます。

結局のところ、「思いと損得のバランス」が大事になるかと思います。

重要なことは損得だけでは計れないということです。継がせる側、継ぐ側それぞれに考える損得と思いがあります。つい合理的な話をしたくなりますが、双方に思いがありますので、話し合って、相手の考えを知ることが重要なことかと思います。

思いや目的が違うと目標も変わるので、意思疎通しておかないと、後に経営などについて相談するときに、話が食い違ったり、お互いに理解し合えなかったりという事態になりかねません。最初に、「何を継ぐのか、なぜ継ぐのか」を考えていただくことで緩和されるのではないでしょうか。

体験を通して得られる成長

「成長＝体験」であることを共有しておくことも重要だと思います。

「試行錯誤するからこそ成長できる、学習は体験からうまれてくる」のです。失敗を心配して、親がアドバイスをしすぎると、成長のチャンスを逃すという事になりかねません。

取り返しのつかない大きなトラブルなど「損失」が生まれる懸念があれば、制止やアドバイスをすることも必要です。しかし、体験しないと成長しないということを踏まえて、継ぐ側は、成長のチャンスを奪わないで欲しいという意思を伝えていくことも大切になりそうです。

船頭は一人で、でも相談は多くする

経営権を渡されたら、率いる船頭は一人の方が、組織としても患者さんに対してもプラスに働くと思います。

若先生が自身でしっかり決めるということを前提に、大先生に意見を聞くことは大切だと思います。大先生がアドバイスできる機会を増やしていくというのも、事業承継や一緒に仕事をしていく上で重要なことだと感じています。

今回は、事業承継を始める上で最初に話すべきことは何という質問をいただきました。まずは意思疎通をしていただき、お互いの思いや考えを共有していただければと思います。

ご参考にしてください。

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