職員にどこまで任せる?院長が譲れない権限は?
診療所経営において、全ての物事に関して院長が判断し実施していると身動きがとれず、本来したい医療ができないということにもなりかねません。そこで、院長が絶対にすべきこと、職員に任せられることを明確にし、必要に応じて権限を委譲することも必要なのではないでしょうか。
今回は、院長が譲れない権限とは、そして職員にどこまで権限を渡してもよいのか考えます。ぜひご参考にしてください。
これだけは渡してはいけない院長の権限とは?
①方向性(思い)
院長が人に渡していけないものは「方向性」です。
クリニックや歯科医院の大きな方向性をみんなで決めて行こうというのは、一見よさそうにみえますが、責任をとれない人たちに責任を押し付けてしまう形になってしまい、上手くいかないことがあります。
診療所としての大きな方向性は、院長が決めることでスムーズな経営に繋がると考えます。なぜなら医療業界は、院長が決めた医療を職員みんなで実行に移していく、一種の徹底したトップダウン構造ともいえるからです。そのため方向性は院長が決断するという形が大事になってくると思います。
②決定、決断
「決定や決断」は院長が行うことも重要だと思います。
経営などに関して、職員から様々なアイデアを取り入れることはいいのですが、最終的には院長が決めるということが大切です。なぜなら責任の所在が分からなくなるからです。
「自由に決めていいよ」と言った場合、職員のみなさんが何を考えるかというと「誰が責任を負うのか」ということです。「自分が責任を負うなら決めない方がいい」という考えにならないためにも、院長が「責任は私が負うからいいアイデアを出してね」という形で進めていくことが大切なのではないでしょうか。
③医療判断
長年、診療所を経営していると、看護師や理学療法士や歯科衛生士など様々な専門職の人たちが、院長の判断に対して「私はちょっと違うと思う。他の方法がよかったのではないか」と考えることも出てくるかと思います。
診療所では、職員たちの働きやすさ、やりやすさを追求するため、職員たちの意見を取り入れるようになっていきます。
しかし、医療判断においてそれをやってしまうと、若い職員たちが「歯科衛生士、看護師、理学療法士が決めてもいいんだ」と勘違いをすることもあるでしょう。
そうなると院長が決めた医療に職員全員が自信を持つということが崩れてしまいます。院長の医療に疑念を抱き、足並みが揃わなくなってしまうので、あくまでも医療判断は医師、歯科医師がやるということを徹底することが重要です。代診が多い場合は、その時に担当した医師に権限があるとよいかと思います。
責任者や専門家に任せてもよいことは?
分院長、事務長、統括主任などの責任者には、委譲に近い形で一部、任せてもよいかと思います。例えば、統括主任に運営のことは任せるということです。
ここで、経営と運営は異なるということを明確にしておくことも大切です。運営はあくまでもマネジメントの世界で、やるべきことを前進させていくことです。院長が担う経営は、大きな方向性、戦略、お金に関わるような決断が含まれると考えていただくと分かりやすいかと思います。
また今回は専門家に任せるということもご紹介したいと思います。
例えば職員から労務に関することを聞かれることもあるかと思います。職員から信頼と納得を得るためにも、労務などの法律に関しては社労士に聞いた上で院長が決断するという流れであることを最初から伝えておくのが大事だと思います。
ウェブマーケティング、人財育成やコーチングなどのプロは知識や経験を持っているので、医療以外のことに関しては、専門家の見解を聞いた上で職員に説明し、院長が決定していくという、外部に任せる部分を持つこともよいのではないでしょうか。
リーダーたちに任せてもよいことは?
最後にリーダーやマネジャー、得意な人に任せてもよいと思うことは「周知」です。院長が決めたことをみんなが理解し、共感、納得してもらえるように周知をお願いするということです。
そして、業務改善の提案や、決定事項をどう進めていくか、その進捗管理などの行動管理も任せてみてはいかがでしょうか。
さらに、「絞り込み」も任せてもいいことだと考えます。例えば、患者さんのために何か新しい医療をやっていこうと考えた時に、職員からたくさんの案が出てきます。その際に、リーダーたちの権限で絞り込んでもらい、院長に上げてもらうという流れで進めてみるのもよいかと思います。
権限の委譲と譲れない部分についてお話してきました。責任は院長がとりながらも、組織を育てるために権限を委譲していくことを試してみてはいかがでしょうか。ご参考にしていただければと思います。
詳しくはこちらの動画をご覧ください。