クリニック内のデジタル化|光学口腔内スキャナー(iTero)の活用
2014年、日本に光学口腔内スキャナー(iTero)が導入されて、早7年。
昨今、様々なメーカーから発売され光学スキャナーを取り入れられている先生方も増えており、ますますクリニックのデジタル化が進んでいます。
一方で、高機能なスキャナーを導入したにも関わらず、十分に活かしきれていない面もあるかもしれません。せっかく購入した機器が宝の持ち腐れとならないよう、今回は、私が実際に使用しているシーンをご覧いただき、日々の診療に活かしていただければ幸いです。
光学口腔内スキャナー(iTero)の活用場面
私は、マウスピース矯正(インビザライン)を主軸に診療を行っており、光学口腔内スキャナー(iTero)はなくてはならない必須のアイテムです。
iTeroを活用する4つのシーンをご紹介します。
① 光学印象する
② インビザラインシステムのデジタルワークフローに連携する
③ 歯並びのBefore/Afterをその場でシミュレーションする
④ 持ち運び、クリニック間を移動する
① 光学印象する
歯列全体と咬合関係も含めたデジタルデータをもとに、デジタルセットアップを作成しマウスピース装置を作ります。
デジタルデータは従来の印象材に起因するエラーがなく、正確で精密な歯牙データが最終的に精度の高いマウスピース装置として置き換わるため、まさにこの光学スキャナーデータが全ての源ともいえるでしょう。
「なぜデジタルスキャンを行うべきなのか」の答えは「精度の高い矯正治療を行うため」に集約されます。
デジタル化処理速度が上がり、全顎撮影が5分ほどで完了します。
また従来の印象が苦手な患者さんにとっては、かなりストレスが削減でき、再印象の心配もありません。
② インビザラインシステムのデジタルワークフロー連携する
撮影したデータは、瞬時にクリック一つでインビザラインシステムに送信でき、発注作業がシンプルになっています。
配送、印象処理といったアナログ作業の必要がないため、セットアップ作成までタイムロスがありません。
また、昔は模型を管理する技工操作やスペースに悩まされましたが、デジタル化の良いところはすべてのデータをクラウド上で保管できる点です。
いつでもデータを取り出すことができ、模型分析、角度分析といったデータ解析は手作業で行う必要がありません。
③ 歯並びのBefore/Afterをその場でシミュレーションする
矯正相談に来られる患者さんは、「ゴールの歯並びがどうなるのか」に最も関心があります。iTeroにはアウトカムシュミレーターが搭載されており、スキャンデータを60秒ほどで解析し、簡易的なAfter像を作成することができます。
その場で歯の位置や角度、IPR量も微調整しながら、場合によっては抜歯・非抜歯を比較し、コミュニケーションをとるツールとして非常に有効です。
④ 持ち運び、クリニック間を移動する
今回新たにリリースされたiTero 5D Plusモバイルタイプは、CPUの機能性がアップしたことでデータ処理能力が上がったことはもちろん、バッテリー搭載によりチェア間をそのまま移動、同じクリニックで異なるフロア間を移動する際にも、デスクトップパネルをそのまま持ち運ぶことができます。
さらに、いくつかのクリニックを受け持つ私は、キャリーケースで持ち運び診療へ向かいます。従来よりも小型化・軽量化され、本当に便利になりました。
デジタル化が進む歯科治療の未来とは
口腔内スキャナーは矯正の分野だけではなく、インプラント、補綴にも用いられ、より一層、高度な包括的歯科治療が可能となっています。今後もさらにデジタル化が進み、デジタルレントゲン、CT、口腔内スキャナーがクリニックに備え付けられることが当たり前の時代になっていくでしょう。
インビザラインをはじめとするデジタル矯正は、口腔内スキャン(STLデータ)とCT(DICOMデータ)が重ね合わされ、歯冠と歯根が連動したセットアップモデルを作成し治療計画立案を行う未来がもうすぐそこに来ています。
しかし、デジタル機器の機能を理解して使いこなし、科学技術の恩恵を日々の診療に活かさなければ意味がありません。
口腔内スキャナーを導入した先に「どんな医療を患者さんに提供したいのか」いま一度、考えてみてはいかがでしょうか。
次回は多様なキャリア形成について伺います。次回の配信は11月1日(月)です。
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