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医療経営におけるKPIの効果的な活用法|院長Q&A

KPIとは

KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、組織の目標や指標を設定し、その達成度を定期的に評価するものです。進捗状況が把握しやすいため、目標達成に効率よく繋げることが可能な管理手法です。

KGIとKSFの識別

効果的にKPIを運用するには、まずKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)とKSF(Key Success Factor:重要成功要因)を明確に設定する必要があります。KGIは組織の究極の目標を示し、一般的な例として「売上の増加」があります。この目標を達成するために必要な成功要因がKSFで、例えば医院では、「新規患者数の増加」や「再受診率の向上」、「患者満足度の向上」などが挙げられます。

このKGIとKSFを明確にし、それに基づいたKPIを設定するという順序が重要です。まず経営目標(KGI)を定め、それを達成するための成功要因(KSF)を特定し、最後にこれらを支える具体的な行動や指標(KPI)を決定します。このプロセスを適切に管理することで、目標達成に近づくことができます。

通常、先生や経営幹部がKGIとKSFを設定し、それに基づいてリーダーや職員がKPIを具体化しますが、よくある失敗事例として、経営幹部がKGIのみを定め、KSFの設定を省略して、職員にKPIの策定を促すケースがあります。例えば、「予防医療を地域に広げる」といった漠然とした目標が与えられた場合、具体的な対策を即座に考えることは職員にとって非常に困難です。経営幹部はKGIとともにKSFもしっかりと設定し、これらを明確に分類した上でKPIを設計することが推奨されます。

KPIは行動の数だけ作り、単純化させる

また、KPIには、達成したい目標に向けての具体的な行動や、成果をはっきりと測れるような指標を設定することが大切です。

例えば、「新規患者数の増加」というKSFを達成するために、「月間ブログ投稿数10以上」や「ソーシャルメディアでの週間投稿数20以上」といった具体的なKPIを設定することで、職員は目標に対する行動を理解しやすくなります。「やったかやっていないか」という単純な判断ができる形にすることで、職員は日々の業務を明確に評価し、進捗状況を把握できるようになります。

KGIを職員が理解しやすい形に変える

医療業界では、「売上増加」という目標が職員の直接的な報酬と必ずしも結びつかないため、これを経営目標とした場合、職員はその成果から得られるメリットを直接感じることが難しいです。その結果、職員のモチベーション維持が課題となります。この問題を解決するためには、「仲の良い職場を作る」や「患者さんからの感謝の声を増やす」といった、職員が日常的に感じ取れる具体的な状態や環境を経営目標(KGI)に設定することが必要です。このようにすることで、職員は自分たちの努力が具体的な成果として現れるのを感じ、より積極的に目標に取り組むようになります。

また、医療業界では、売上を上げることよりも「患者さんに最適な治療を提供する」ことが最優先されることが多いです。この業界特有の価値観を理解し、それを反映したKGIを設定することで、職員の動機付けと業務の質の向上が期待できます。

動画はこちらから

編集後記:LTV(ライフタイムバリュー)への活用

一般企業では、LTV(ライフタイムバリュー)、すなわち顧客が生涯にわたって企業にもたらす総利益の最適化にKGI、KSF、KPIを活用することが一般的です。LTVは顧客の長期的価値を測る重要な指標とされています。

医療経営においても、LTVの概念は極めて重要であり、患者さんが生涯にわたって医療機関にもたらす利益を最大化することは、医療サービスの質を向上させ、経営を安定させる上で必要不可欠です。

経営目標(KGI)を「LTVの最大化」とした場合、これを支える成功要因(KSF)としては、「患者満足度の向上」や「継続的な健康管理サービスの提供」などが挙げられ、これらの成功要因を達成するための具体的な行動や指標(KPI)としては、「定期健康診断の受診率」や「治療プログラムへの参加率」などが設定できるでしょう。これらの指標を効果的に管理することで、長期的な患者満足度を維持しつつ、医療サービスの質を向上させることが可能になり、LTVの向上を通じて収益性とサービス品質が持続的に改善されることが期待されます。

KPIを適切に運用できれば、医療経営はより効率的かつ効果的に進められると思います。ぜひ、参考にして実践していただければと思います。

著者:IGYOULAB編集部・森田

2児の母であり、転勤族で多くのクリニックや歯科医院を受診してきた経験を活かして、患者さん目線での意見や記事を提供できたらと思います。

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