職場のやりがいが「やりがい搾取」にならないために|情熱とコンプライアンスの関係
少し前に「やりがい搾取」という言葉がTwitterでトレンド入りしました。やりがいを従業員に押し付けることでサービス残業させたり、休憩中に会議をさせたりして、本来払うべき賃金を支払わないという形で搾取するということが問題になったのです。
医療業界でも、やりがい搾取となる場面はあるのでしょうか。
そこで今回は、「やりがい搾取に近いことがある」と、診療所などで働く職員から聞いた話を共有させていただければと思います。
やりがい搾取の問題はコンプライアンス違反
働く中で、やりがいを感じる仕事だけでなく、やらなくてはいけない、やりたくない仕事もあります。それを差し引いたときに、人間関係などを含めてプラスになるので辞めずに働き続けられるのではないでしょうか。
やりがいはあるが残業代が支払われないといったことや、差し引きしたときに、「やりがい」と洗脳されているので、「こういうものか」と思わせて結果的に賃金を減らしているというのが「やりがい搾取」です。
やりがい搾取で大きな問題となっているのが、コンプライアンス、つまり法を守っていないということです。
例えば営業マンが、「売上が上がれば自身の収入も増えるので、人をだましてでも売る、法を破ってでも自分のやりがいになるから売る」という行為は許されることではありません。
やりがいがあるので法を破っていいのかということを考えるのは重要な視点で、コンプライアンスはとても大切なのです。
医療業界での「やりがい搾取」場面とは
医療業界で「やりがい搾取」はどれほどあるのでしょうか。
職員の人たちに話を聞いて圧倒的に多かったのは「昼休憩の時間に仕事をさせられる」ということでした。
そこには院長と職員の価値観の違い、仕事に対する意識のずれもあるかと思います。
例えば、「簡単なことは昼の休憩中に決めておいてよ」ということや、忘年会に行く場所や備品を買う際に「どれにするかランチを食べながら決めておいて」ということもあるのではないでしょうか。
職員のみなさんは昼間の過ごし方が定着していて、何か決めなければならないことがあると、普段のルーティンの合間に仕方なく話をするのだと言います。
他にも「昼休みに仕事をさせられる」という意識になるものの中に、昼食を食べながら製薬会社の宣伝などを聞くランチョンセミナーもあるということです。
昼休みは自分なりの休み方をしたい、体調がつらいときに毎月やられるとしんどいという声が聞かれました。
また自由参加の勉強会も挙げられました。本当に自由という雰囲気であればいいですが、例えば、院長や理事長がみんなの前で「参加する人は意識高くていいと思う」と言ってしまうと、職員は出ないとまずいかなと思ってしまいます。強制力が働くときは、賃金として支払われるべきだというイメージが出てくるのです。
SNSも時間の拘束に繋がる!?
最近増えてきたのは、就業時間を大幅に過ぎた時間帯に、職場のLINEグループのトークが繰り広げられるのが非常にしんどいと言われることです。夜遅い時間帯や日曜日などでも、院長や理事長からだと返さざるを得なくなるのです。
何かの案件がどうなったか、ふと思いついたときに連絡したくなるものですが、こういうことが常態化してくると受けた側はものすごくツライそうです。
雇用契約は時間の拘束が前提にあります。
休みの日に繰り返し通知がくると、返信が必要だと思うものだと、返信しないとまずそうだなと思ってしまう、これは拘束に近いのではないでしょうか。そう受け止める職員も増えてきていると感じます。
コンプライアンスは一般企業では非常に重要視されるようになってきていますが、医療業界ではまだまだ進んでいない状況もあるかと思います。
「やりがい搾取」がTwitterでトレンド入りするような時代。自分はいいと思っていることも世間ではよくないことだったということも世の中にあるのではないでしょうか。
ご参考にしていただければと思います。
動画はこちらからご覧ください。