カウンター居酒屋の接客だから分かる「その人に合った」接遇のコツとは?|他業種のノウハウを医療へ
接客業などに携わる人たちに聞く診療所でも役立つコミュニケーション術の特集。今回は、飲食業の みなみさん(仮名)にお話しを伺いました。
みなみさんは、カウンターのみのおばんざい屋で、接客をされています。
なじみの店になるには一時だけではない関係性の構築が大切になります。歯科の定期健診や整形のリハビリ、予防による通院が増えてくる中、「継続して関わる」ということのヒントになればと思います。
相手がどんなタイプか見極めるために
多くのお客さんが、仕事終わりに飲みに来られているため、リフレッシュしてもらえるよう明るく楽しいお店づくりを心がけているという みなみさん。全てのお客さんに目を配ることも大切にしています。
酒に酔ったお客さんの話し相手もすることから、心無いことを言われることもあるそうで、そんな時は、大人の対応をしなければならないことが大変な点でもあるといいます。
中には対応に苦慮する人もいるそうですが、お客さんをおだてるだけでなく、自身の意見を伝えると関係性が良くなったこともあったということで、「相手に思いを伝える」ことで、信頼関係が生まれることも体験したといいます。
初めて来店したお客さんの場合、その人のタイプを見極めるスキルが重要だと感じている みなみさん。例えば、話が好きな人に対しては、興味を持って話を聞き、話しが苦手な方には、自身から話題や質問をするようにしているということです。
相手がどんな人か見極めるためにも、自分から話しかけ、自身が心を開くことを心がけているそうです。その人の表情や話し方をしっかり見て、どんなタイプなのかを見極め、それぞれのお客さんにとって心地良い空間を作ることを大切にしているということです。
これはまさに、診療所で新しい患者さんが来院されたときにも当てはまるのではないでしょうか。患者さんは、何か心配なことがあって来院され、そして初めての診療所で不安を抱えていらっしゃるかもしれません。
コロナ禍でマスク生活が余儀なくされ、なかなか表情を読み取ることが難しいですが、相手のしぐさや話し方などから、相手の状況を読み取り、必要に応じた声掛けが大切になってくるかと思います。
そして、患者さんが何かを話したり、説明したりしているときには、話を聞いてもらっていると患者さんが感じることが大切だと思います。話を聞くときの顔の向きや相槌なども意識していきたいものです。
患者さんが不安げな様子だった場合には「何か質問はありますか?」「何か気になることはありますか?」という一言を添えられるかどうかなど、その人をしっかり観察し、向き合うことでできる声掛けがあるのかもしれません。
職場での振る舞い方
同じ職場の人たちと良い人間関係をとるために、みなみさんが大切にしていることは、「上司の目や機嫌を伺いすぎないこと」だと言います。
相手にどう思われてるかを気にしすぎるのではなく、まずは淡々と自分の仕事をこなすことが大切だと考えています。人と人の相性もあるため、割り切る気持ちも大切だと、みなみさんは考えています。
そして、仲間に「迷惑かけたくない」という気持ちを強く持ち続けてしまうと、精神的に追い込んでしまうため、背負いこみすぎず、時には上司や同僚や甘えることも大切なのではと話します。
診療所も一人ではなくチームで運営しています。
様々な人がいる中で、よい関係性を築いていく努力も大切ですが、ある程度の割り切りも必要なのかもしれません。
人によって合う合わないがあるのは当然ですが、それをクローズアップしすぎるのではなく、誰のために働くのか、誰の役に立ちたくて働いているのかなど、自身の働くモチベーションの原点を見つめ直すことも大切なのではないでしょうか。
あとがき ~その人を知ろうとする姿勢~
今回は、みなみさんにご自身が大切にされている接客術について伺いました。
みなみさんは、自身から話しかけ、どんなタイプのお客さんかを把握した上で対応を変えていらっしゃいました。
患者さんも一人一人違い、求めている対応も異なると思います。
短時間の診察や受付時で、全てを把握することは難しいかもしれませんが、その人を知ろうとする姿勢、疾患だけではなく「人」を診るというスタンスが大切なのだと感じました。
シフト制となっている診療所もあり、毎回同じ職員が患者さんに対応するとは限りません。
患者さんへの対応で、注意すべき点や、配慮すべきことがあった場合は、職員で共有できる体制や、コミュニケーションも大切にしていきたいものです。