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かかりつけ医が広げる地域・職域連携—持続可能な健康支援と医療経営の実践

10月25日に、厚生労働省主催の「地域・職域連携推進関係者会議」がオンラインで開催され、予防医療の重要性と、地域・職域が一体となった健康支援の必要性が改めて確認されました。

【参考】

日々の診療に追われる中で、新たな取り組みを検討する余裕がないというのが、多くの医療機関の実情ではないでしょうか。「人手が足りない」「時間的余裕がない」「事業にどう役立つのか」こうした声をよく耳にします。

そうした実情を踏まえ、今回は”かかりつけ医”としての立場から、持続可能な医療経営につながる地域・職域連携の実践的な方法について考えてみたいと思います。

地域に根差した”かかりつけ医”としての価値創造


健康長寿社会の進展により、継続的な健康支援の担い手である「かかりつけ医」の役割は、これまで以上に重要性を増しています。

特に予防医療の観点から、医療機関には「治療」だけでなく「予防」「相談」という複合的な機能が求められるようになってきました。

しかし、「気軽に相談できる医療機関」という理想と、現場の実務との間にはまだギャップが存在するのが実情です。

多くの医療機関では、日常的な健康相談に対応するための体制やマニュアルが整備されておらず、突発的な相談への対応に苦慮されているのではないでしょうか。

専門性を活かした情報発信でブランディング

このギャップを埋めるための重要な取り組みが、診療科の専門性を活かした戦略的な情報発信です。

例えば、消化器内科であれば、生活習慣病予防や食生活改善に関する専門的な知見を発信することで、潜在的な患者さんに「どのような相談ができるか」が自然と伝わっていきます。

同様に、整形外科であれば職場での腰痛予防や正しい姿勢についての情報を、歯科であれば口腔ケアと全身の健康との関連性について、それぞれの専門性を活かした情報を発信することができます。

このような専門的な情報発信は、単なる広報活動ではなく、地域住民の健康意識を高め、予防医療の重要性を伝えるという、医療機関としての社会的使命を果たすことにもつながります。

地域ニーズの把握と分析

効果的な健康支援を展開するためには、地域特性の理解が不可欠です。

日々の診療データを分析することで、その地域特有の健康課題が見えてきます。

例えば、工場が多い地域では筋骨格系の症状が目立つ傾向があり、オフィス街では精神的なストレスに関する相談が多いといった特徴が浮かび上がってきます。

また、患者さんとの日常的な会話の中からも、貴重な情報を得ることができます。

例えば、「会社での健康診断で指摘された項目について詳しく知りたい」「職場でできる運動について相談したい」といった声は、そのまま潜在的なニーズを表しています。

地域に根ざした健康支援活動の展開

これらの地域特性やニーズを踏まえた上で、実践的な健康支援プログラムを展開することができます。

健康相談会や、栄養やストレス管理をテーマにした健康講座、血圧測定や血糖値チェックができる「健康チェックデー」、親子で参加できる健康ワークショップなど、小規模な地域住民向けのイベントを開催したりすることが考えられます。

さらにこれらの活動を通じて得られた地域の健康課題やニーズを基に、より専門的なプログラムへと発展させることができます。

例えば、地域の就労者が多く集まる時間帯に合わせた健康講座の開催や、職業特性に応じた予防プログラムの提供などです。オフィスワーカーの多い地域であれば、デスクワークによる肩こりや腰痛の予防に焦点を当てたセミナーを、工場勤務者が多い地域では、作業姿勢の改善や腰痛予防のためのストレッチ教室を企画するといった具合です。

企業との連携構築への展開

また、こうした地域での活動実績を基盤に、企業との連携を広げていくことができます。

医師会・歯科医師会や商工会議所の活動に参加し、産業医や企業の健康管理担当者と自然なネットワークを築いておくこともおすすめです。

段階的に築いた関係性を活かし、企業の健康経営支援へと発展させることが可能です。具体的には、職場での健康管理アドバイザーとして、ストレッチ指導プログラムの提供や、社員食堂でのメニュー提案など、企業の健康課題に応じた支援を行うことができます。

地道な活動の積み重ねは、口コミによる来院者の増加や、企業からの信頼獲得につながり、結果として地域における医療機関としての価値を高めることにもなります。

デジタルを活用した情報発信

現代では、InstagramやXなどのSNSを活用した情報発信が大きな役割を担っています。

効果的な情報発信には、質の高い内容と継続的な発信が欠かせません。

専門的な内容を分かりやすく伝えることはもちろんですが、地域の特性や季節性を考慮したコンテンツ設計も必要です。例えば、地域の花粉飛散情報に基づいたアレルギー対策や、地元の食材を活用した健康レシピの提案など、地域に密着した情報を発信することで、より身近な医療機関として認識されるようになります。

持続可能な医療経営に向けて

地域・職域連携の取り組みは、単なる社会貢献に留まりません。

中長期的な視点で見れば、医療機関の経営基盤を強化することにもつながります。地域における医療機関のプレゼンス向上は、新たな患者さんとの出会いを生み、予防医療分野での収益機会の創出にもつながります。

さらに重要なのは、こうした取り組みを通じて、患者さんとの長期的な信頼関係が構築されることです。「かかりつけ医」として選ばれる医療機関となることで、より充実した医療サービスの提供が可能となり、それが更なる信頼関係の構築につながるという好循環を生み出すことができます。


日々の診療活動の中で得られる情報を活用し、専門性を活かした情報発信を行い、地域の健康課題に応える取り組みを積み重ねていく。そうした地道な活動の積み重ねが、結果として医療機関の価値を高め、地域住民の健康増進に貢献することにつながっていくのではないでしょうか。

ぜひ参考にしていただければ幸いです。

著者:IGYOULAB編集部・森田

2児の母であり、転勤族で多くのクリニックや歯科医院を受診してきた経験を活かして、患者さん目線での意見や記事を提供できたらと思います。

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