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【連載・第3回】患者さんに合わせ、時間をかけて寄り添う医療を

人口動態や市町村の変化に合わせて変わる診療所経営に焦点をあて、医療法人北海道家庭医療学センター直営の2つの診療所の院長に地域の特性に合った医療提供や地域医療への想いについて聞く連載。(全4回)

1996年に北海道・室蘭で誕生した北海道家庭医療学センターは2008年に法人化し現在、北海道を中心に協力法人を合わせると15の拠点を持つ。

「良質な家庭医療の実践」「良質な家庭医の養成」「北海道および日本の家庭医療の発展に対する貢献」のミッションを掲げ、家庭医療診療所のモデルを提供してきた組織だ。

第3回となる今回は、北海道の中南部に位置し、人口約4万5000人の登別市にある「若草ファミリークリニック」の安達記広院長(39)に話を聞いた。若草ファミリークリニックは、常勤の医師2人、非常勤の医師3人、そして4人の看護師と事務長を含めた事務職員4人で運営している。外来診療に加えて、隣接する室蘭市にある同じく医療法人・北海道家庭医療学センター直営の「本輪西ファミリークリニック」と連携しながら、訪問診療も行っている。

地域の医療相談者という役割を医師として目指す 

札幌市出身の安達記広院長はもともと緩和ケアの医師を志していた。神奈川県の聖マリアンナ医科大学を卒業後、初期研修先に選んだ横浜市にあるクリニックの院長との出会いが転機となった。そのクリニックで、在宅医療で看取りも行っている院長のもとで実習を重ねる中で、自身もこうした医療を提供できる医師になりたいと考えるようになった。

そのクリニックの院長に勧められたこともあり、現在所属している北海道家庭医療学センターに入職、今年で9年目となる。地域の中で医療相談者という役割を持つ家庭医が自分には合っているのではないかと気づいた大きな出会いだった。

3年前に北海道家庭医療学センター直営の若草ファミリークリニックの院長に就任し、現在に至る。


地方の診療所が抱える医療従事者の高齢化

車で5分ほど走ると隣接する室蘭市に到着する位置にある若草ファミリークリニック。

約7万9000人の室蘭市には、総合病院が3つほどあり、検査や専門医への紹介などの面で比較的よい環境にあるという。

一方で、若草ファミリークリニックの近隣には内科のクリニックが5軒あるが、医療従事者の高齢化という課題を抱えている。医療機関の減少の懸念が拭えない地域だ。全国でも地方と言われる場所では、同様の課題を抱え、地域医療を持続させるための模索が続いているのが現状だ。

総合病院が多いため、室蘭市や登別市では比較的入院がしやすい。しかし新型コロナウイルスのまん延によって病院でも面会が制限され、最期を家族と過ごせない、会えない状況が生まれたこともあり、在宅医療のニーズが高まっていると安達院長は感じている。

社会のニーズは時代や世相によって変化する。診療所として何が求められているのかを知るためにも、地域のニーズを把握し続けることの大切さを感じる。

医療を取り巻く地域の課題がある中で、安達院長は北海道家庭医療学センターというグループ体制があることが大きな強みだと感じている。グループ体制という意味では、他業種との連携も欠かせないという。地域連携やグループ体制については、次回の記事の中で詳しくお伝えする。

継続受診のため患者さんが話しやすいペースを重視


クリニックを牽引する安達院長が患者さんと向き合う上で大切にしていることは、「しっかり患者さんの話を聞きながら、次も安心して受診できると思ってもらえるような信頼関係が築けるよう意識している」ことだという。

話を遮らず、話しやすい雰囲気を作るだけでなく、ゆっくり話す患者さんには、ペースを落として話したり、早く話す患者さんには、そのリズムに合わせて話したりと、患者さんに合わせて話すスピードを変えているという。初診の患者さんには特にこうした意識を強く持っているという。

相手の言動やしぐさなどを真似することで、相手に好感や親近感を与える「ミラーリング効果」というテクニックがあるように、人と会話をする上で、「話しやすい」と感じる要因の一つに話のスピードが挙げられるかもしれない。

相手のペースや声の大きさやトーンを合わせることで、より患者さんが話しやすい環境を生み出せるだろう。

時間をかけて患者さんと寄り添う家庭医

若草ファミリークリニックは、家庭医療を提供するクリニックとして、患者さん一人一人に寄り添えるよう時間をかけて向き合っている。

午前は医師2人で、午後は医師1人で外来を担当しているため、1日に診られる患者数が限られてくる。多くの患者さんを診るということが難しい分、医療経営という面では、地域包括診療料や生活習慣病指導管理料といった加算は大事にしているという。

患者さんによって診察時間は異なるが、初診でメンタルヘルスの不調を抱えている人や、一人暮らしの高齢者で様々な疾患を抱えている患者さんなどは特に診察時間を長く確保している。

患者さんとの時間をしっかりとる分、待ち時間対策も欠かせない。待ち時間を短くするため、予約制を導入している。この予約状況も毎月ほぼ100%であること、これに加え当日ウォークインの患者さんもいるので、待ち時間がゼロというわけにはいかないものの、曜日によって差が生まれないように、均一に患者さんを受け入れるよう、予約の調整を行っているという。

あとがき 寄り添う姿勢で信頼関係の構築へ

多くの院長は患者さんと向き合う時間と患者数の両立に悩むだろう。こうしたトレードオフの関係にある時には「どんな医療をしていきたいか」という自身の信念のようなものが最後は大切なのだと感じた。

今回、安達院長が大切にしている家庭医としての患者さんとの寄り添っていくというスタンスがあり、その上で待ち時間対策など多くの人を診るという両立に向き合っていると感じた。こうした軸となる信念が患者さんだけではなく職員にも伝わるのだろう。

また、安達院長が大切にしている、相手のペースに合わせて話をすることは、患者さんだけでなく、職員同士の会話の中でも活かせるのではないだろうか。

その人に合わせるということは、その人のことを見て、向き合うことが前提となるため、患者さんや仲間に寄り添う姿勢がある証でもあると思う。

こうした積み重ねが信頼関係の構築に繋がっていくのだろう。 

次回は、安達院長が考える他職種の連携や地域に出ることの大切さなどについて話を聞いた。次回の配信は12月23日の予定。

著者:IGYOULAB編集部(イギョウラボ)

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