患者満足と業務効率化を実現する「医療DX」 | 12/2マイナ保険証本格導入
2024年12月から予定されているマイナ保険証の本格導入は、医療機関における業務効率化とサービス品質向上の重要な転換点となります。
2024年10月31日に開催された第184回社会保険審議会医療保険部会では、12月2日以降の資格確認方法について議論され、明日11月15日(金)にYouTubeライブ配信で解説される予定です。
詳細は厚生労働省のサイトからご確認ください。
「12月2日以降の医療機関・薬局の窓口における資格確認方法等についてのセミナー」 を開催します <YouTube ライブ配信>|厚生労働省
システム対応や設備投資が医療機関には負担となる一方で、この機会を単なる制度対応に留めず、医療全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するきっかけとすることが重要です。
DX化により、業務効率化や患者満足度の向上、さらには経営の安定や成長へとつなげることが期待されます。
目次
医療機関がまず取り組みやすいDX化ステップ
「DX化」と言われても、実際にはどこから手をつけたらいいか分からない…。
そんな先生も多いかもしれません。
そこで、ここでは特に負担が少なく効果が実感できる「DX化の始めやすいステップ」をご紹介します。
① 予約システムのデジタル化
・オンライン予約
スマートフォンやパソコンから予約できる仕組みを整えることで、受付での電話対応が減り、患者さんにとっても利便性が高まります
・リマインダー機能
診療日前日に自動リマインダーを送信して、キャンセルや遅刻を防ぎます
②電子カルテや診療記録の管理
・電子カルテ
検索や情報共有が簡単になり、診療履歴の一元管理が実現することで医師とスタッフがスムーズに情報を共有でき、診療の効率が向上します
・問診や診療内容のテンプレート化
頻繁に使用する内容をテンプレート化することで、問診作業がスムーズになり、診療の標準化が進みます
③マイナ保険証対応の保険資格確認
・顔認証付き保険証確認
12月から本格的に導入されるマイナ保険証に対応し、顔認証での資格確認をスムーズに行うことで、患者情報の管理が効率化されます
④患者さんとのコミュニケーションをデジタル化
・診療後のフォローアップ
診療後にオンラインでアンケートを送付し、患者さんのフィードバックを収集すればサービス改善にも活かせます
・情報発信
ウェブサイトやSNSで診療時間や予防医療に関する情報を発信し、患者さんとの信頼関係を築きます
⑤シフト管理や勤怠管理のデジタル化
・シフト表のオンライン化
スタッフがいつでもシフトを確認・調整できるようになり、柔軟な勤務環境が整います
・勤怠管理アプリ
給与計算も簡単になり、スタッフの勤怠管理の負担を軽減します
DX化がもたらす医療経営のメリット
DX化は、医療機関に多くの経営メリットをもたらします。
以下に、DX化が実現する医療経営の具体的な利点を紹介します。
・業務効率化によるコスト削減
電子カルテやオンラインでの保険資格確認システムの導入により、紙の管理や手入力が不要となり、受付から診療、会計にかかる負担が軽減されます
迅速な情報共有や重複検査の防止によって、コスト削減と効率的な運営が期待できます
・医療データの活用による経営の最適化
診療履歴やリピート率などのデータを一元管理し、分析に活用することで、経営改善が可能になります
たとえば、診療のピーク時間帯に合わせたスタッフ配置や、リピート率の傾向に基づくサービス改善が進みます
・スタッフの働きやすさと定着率の向上
シフトや勤怠管理をデジタル化することで、スタッフの負担が軽減され、スキルアップの機会も提供されます
働きやすい職場環境が整うことで、スタッフの定着率が向上し、長期的な安定経営につながります
また、DX化は単に業務の効率化やコスト削減に留まらず、患者体験の向上を通じて、結果として「選ばれる医療機関となることも目指せる」という点でも重要です。
デジタル化されたシームレスな医療体験が、患者さんにとっての利便性を高め、再訪の動機づけとなります。
患者さんが選ぶ理由を作る「スムーズな医療体験」
例えば、ある小児科での診療体験が非常に印象に残っています。
予約から診察、会計までの一連の流れがアプリで完結し、到着後も受付で対面手続きは不要。順番が来ると先生に直接呼ばれ、診察後は登録済みのクレジットカードで自動的に支払いが完了するため、受付での待ち時間や手間がほとんどありませんでした。
小さな子どもを連れての受診は、できるだけスムーズに済ませたい場面が多く、対面の手続きが省けるこのシステムはとても助かりました。
実際、近隣には診察が丁寧で信頼できる他の小児科もあり、コロナ禍で何軒か通いましたが、最終的には「効率の良さ」が決め手となり、このスムーズな小児科を選ぶことが多くなりました。
DX化によって提供される「待たない」「会計がスムーズ」といった体験は、患者さんにとって「またここに来たい」と感じさせる大きな要素です。
効率と寄り添いのバランスを考えたDX化
もちろん、すべての患者さんが効率を求めているわけではありません。
医療機関にとって重要なのは、ターゲットとする患者層のニーズに応じた柔軟な対応です。
効率重視の患者層が多い診療所ではDX化を積極的に進めることが有効ですが、対面でのコミュニケーションを大切にしたい患者層には、受付や診療は対面対応とし、DX化はスタッフのシフト管理や勤怠管理といったバックエンド業務に限定するなど、バランスを考えることが重要です。
持続可能な医療サービスの実現へ
医療DXは、業務効率化にとどまらず、サービス全体の質向上と持続可能な運営体制の構築に寄与します。
定期的な検査データの管理が容易になり、健康データの継続的な把握により、予防医療や効果的な健康指導が可能となります。
また、デジタル化で生まれた時間を患者さんとの対話に充てることで、医療の質的向上が図れるほか、内部の業務改善やスタッフ教育に注力することで、職場環境の向上とスタッフの定着率向上にもつながります。
定期的なスキルアップ研修やDXツールの活用方法を共有することで、スタッフのモチベーションが高まり、医療機関全体の質向上にもつながります。
各医療機関の規模や特性に合わせて、効率性と『人とのつながり』をバランスよく強化しながら段階的にDX化を進めることが大切です。