現場で成果を出す!業務改善の優先順位付け理論と効果的な会議の進め方|院長Q&A
今回は「業務改善会議で課題の優先順位をどうつけたらよいか」というご質問をいただきました。
業務の効率化やDX化が進む中で、人員の入れ替えや業務の煩雑さに直面している先生も多いのではないでしょうか。
実際に、半日診療を休みにして業務改善会議を定期的に設けている診療所が増えています。 しかし、せっかく時間をとって話し合いをしても、「なかなか成果が上がらない」という声をよく耳にします。
その理由は大きく2つあります。
①優先順位がうまくつけられず、会議がただの話し合いで終わってしまう
②決めたことが実行に移せず、進捗が管理できない
今回は、1つ目の「優先順位のつけ方」において効果的な方法を解説していきます。
目次
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優先順位をどうつけるべきか?
弊社は年間150件以上の研修を医療機関に提供し、業務改善のコンサルティングも多数行っています。
成功例に基づき、まずは「ムリ」「ムダ」「ムラ」を探す作業から始めることを提案しています。
「ムリ」「ムダ」「ムラ」を見つけ出す際には、漠然と「何か意見はありますか?」と尋ねるのではなく、付箋に各スタッフが例えば5枚ずつ書き出す方法がおすすめです。
こうすることで、意見が視覚的に整理されるだけでなく、全員が積極的に参加しやすくなります。
アイゼンハワーの時間管理マトリックス
集まった付箋を分類し、優先順位を決める際、先生方が思い浮かべるのはアイゼンハワーの「時間管理マトリックス」ではないでしょうか。
優先順位をつけるための代表的な理論で、緊急度と重要度の2軸で課題を評価し、4つの領域に分類します。
・第1領域(緊急かつ重要)
→ すぐに取り組むべき課題
・第2領域(緊急ではないが重要)
→ 計画的に進めるべき課題
・第3領域(緊急だが重要でない)
→ 他者に委任するか、手短に済ませる課題
・第4領域(緊急でなく重要でもない)
→ 無駄を避け、できる限り排除する課題
「時間管理マトリックス」は、経営者が中長期的な戦略を立てるうえで大変役立つ理論ですが、現場での業務改善にそのまま適用するのは難しいケースが多いです。なぜなら現場スタッフは、短期的視野で業務をしており、長期的な視点を持つことが難しいからです。
効果的な優先順位のつけ方 – Value vs Effort マトリクス
そこで、現場向けにおすすめするのが「Value vs Effort マトリクス」です。
これは、縦軸を価値の高さ、横軸を労力の大きさとし、4つの領域に分類するシンプルな方法です。
・労力が少なく、価値が高いもの
→ 第1領域(最優先)
・労力が大きく、価値が高いもの
→ 第2領域(計画的に少しずつ)
・労力は少ないが、効果が曖昧なもの
→ 検討課題(経営者が振り分けの判断を)
・労力が大きく、価値は小さいもの
→ 見送り課題
このマトリクスを活用することで、どの課題から優先的に取り組むべきかを視覚的に理解しやすくなります。
第1領域の「労力が少なく、価値が高いもの」を最優先に着手し、第2領域の「労力が大きく、価値が高いもの」に計画的に少しずつ取り組むことをおすすめします。
また、「労力は少ないが、効果が曖昧なもの」は検討課題として、経営者が第1領域や第2領域へ振り分けるか、見送りとするかを判断するのが良いでしょう。
具体例で見る課題の振り分け
では、具体的な課題を、「Value vs Effort マトリクス」でどのように振り分けるかを紹介します。
第1領域(労力が少なく、価値が高いもの )
(例)待合室の椅子配置変更
椅子の配置を少し変えるだけで患者の流れがスムーズになり、混雑が減少する
→労力が少なく、価値が高いため、最優先で取り組むべき
第2領域(労力が大きく、価値が高いもの)
(例) Instagram運用による集患・採用強化
通常業務と並行しての運用には時間と労力がかかるものの、長期的な集患や採用効果が期待できる
→ まずはアカウントの開設から始め、計画的に段階を踏んで少しずつ取り組んでいく
検討課題(労力は少ないが、効果が曖昧なもの)
(例)受付にデジタルサイネージを設置
設置は簡単だが、患者の関心や診療への影響が不明
→効果を見極めて経営者が慎重に判断
見送り課題(労力が大きく、価値は小さいもの)
(例)業務マニュアルの全面改訂
全体改訂には時間と労力がかかり、部分的な見直しで十分対応可能
→労力が大きく、効果が薄いため見送りと判断
業務改善を成功させるためには、まず「ムリ」「ムダ」「ムラ」を見つけ出し、それを付箋などを使って可視化することが大切です。
その上で、「Value vs Effort マトリクス」を活用し、効果的に優先順位をつけて進めていきましょう。
日常業務が忙しい中で半日会議の時間を取るのは大変ですが、せっかくの時間を無駄にせず、ぜひ効果的な会議を実現していただければと思います。