
採用・定着率向上!他院と差をつける戦略的な福利厚生制度の作り方 | 院長Q&A
院長からの質問にお答えする院長Q&Aシリーズ。
今回は、開業予定の先生から『福利厚生、一体何を選べばいいの?』というご質問をいただきました。
開業準備の中で、「とりあえず一般的なものを」「他院を参考に」と考えがちですが、福利厚生は単なる付加価値ではなく、人事戦略として経営上極めて重要です。
戦略的な設計により、採用力や定着率を向上させるため、慎重な検討と定期的な見直しが不可欠となります。
今回は、効果的な福利厚生の設計と活用方法について、基本的な考え方をご説明します。なお、制度設計の際には、社会保険労務士などの専門家と連携することを前提にお話しします。
これから開業される先生はもちろん、スタッフの採用・定着を強化したいと考えている先生は、ぜひ参考にしてください。
動画では「採用」「定着」「成長」の3フェーズに分け、時系列で具体例を交えながら詳しく解説しています。
より詳細に知りたい方は、ぜひ動画もご覧ください。
福利厚生=スタッフと家族の「幸せ」を支える仕組み
給与や手当が労働の対価であるのに対し、福利厚生は “労働外の対価” として、スタッフの生活の質を向上させ、仕事とプライベートのバランスを支える役割を持ちます。
その恩恵はスタッフ本人だけでなく、家族にも広がることが多く、「働きやすさ」や「生活の質の向上」に直結します。
また、「スタッフに長く働いてもらいたい」「より意欲的に働いてほしい」 という事業者側の意図も含まれているのが実情です。
充実した福利厚生は、スタッフのモチベーション向上や職場への信頼感の強化にもつながり、結果的に医院の成長に貢献する重要な要素となります。
福利厚生の種類
福利厚生は、大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2つに分類されます。
①法定福利厚生
法定福利厚生は、法律で義務付けられている制度で、すべての企業が提供しなければならないものです。
代表的なものとして、以下のような制度があります。
・健康保険・介護保険:スタッフとその家族の医療費負担を軽減
・雇用保険:失業時の生活をサポート
・労災保険:業務中や通勤中の事故・疾病に対する補償
・厚生年金:老後の生活を支える年金制度
これらは、スタッフが安心して働ける環境を整え、医療機関としての信頼性を維持するためにも不可欠な制度です。
② 法定外福利厚生
法定外福利厚生は、法律で義務付けられていないため、各医療機関が独自に設計できる制度です。
ここに診療所の理念やビジョンを反映させることで、他院との差別化を図る強力なツールになります。
例えば、住宅手当、資格取得支援、特別休暇、子どもの教育費補助など、クリニックの方針に合わせた柔軟な制度設計が可能です。
スタッフの満足度を高めるだけでなく、採用や定着率の向上にもつながるため、戦略的に活用することが重要です。
法定外福利厚生の戦略的活用
採用力の強化 —共感を生む制度設計―
昨今の求職者は、給与水準だけでなく、職場の価値観や福利厚生の充実度を重視し、自分に合った職場を選ぶ傾向にあります。
特に「どのような価値観のもとで働くのか」「職場の理念に共感できるかどうか」が、求職者の最終的な決め手になることが増えています。
そのため、求職者に「このクリニックで働きたい!」と思ってもらうには、クリニックの文化や価値観を反映した福利厚生制度の設計が不可欠です。これは、求職者とのミスマッチを防ぎ、入職後のギャップを減らすことで、長期的に活躍するスタッフの確保にもつながります。
共感を生む福利厚生の具体例として、動画では弊社の事例を紹介しましたのでぜひ参考にしていただければと思います。
定着率の向上—生活の安定を支える福利厚生—
採用した人財を長く定着させるためには、スタッフの生活の安定を支援する制度が必要です。
給与だけでなく、日々の暮らしや家族のサポートにつながる福利厚生が、スタッフの満足度や働きやすさの向上につながり、結果として離職率の低下を実現します。
例えば、基本的な住宅手当や交通費支給に加え、子どもの習い事手当や教育費支援など、家族全体をサポートする制度を導入している診療所もあります。また、看護休暇の一部有給化や地域特性に応じた特別休暇制度なども、定着率向上に効果的です。
福利厚生制度設計のポイント—実効性と柔軟性を両立—
就業規則への明確な記載と柔軟な運用
福利厚生制度の多くは、就業規則に明記する必要があります。これはスタッフの権利として保証されるものであり、法的な観点からも透明性を確保することが求められます。
ただし、すべてを就業規則に固定する必要はなく、例えば、季節限定の特別手当や一時的なイベント支援などは、柔軟に対応できるよう就業規則外で運用することも可能です。
一方で、福利厚生として確約することで、スタッフが安心して働ける環境が整うというメリットもあります。
固定的な制度と柔軟な制度をバランスよく組み合わせることが、実効性のある福利厚生制度の設計につながります。
利用率の向上と定期的な見直し
どれほど魅力的な福利厚生を整えても、活用されなければその効果は発揮されません。
スタッフのニーズを把握し、制度の設計理由を明確にすることで、利用しやすい環境を整えることが重要です。
また、親しみやすいネーミングを工夫することで、制度の身近さが増し、利用率向上につながります。
さらに、年に1回程度の見直しを行い、スタッフのフィードバックを反映することで、制度の形骸化を防ぐことができます。
ライフスタイルや働き方の変化に応じた柔軟なアップデートも必要です。
まとめ
福利厚生制度は、医院の理念やビジョンを体現し、共に成長できる人財との出会い、そして長期的な信頼関係の構築を実現するための戦略的ツールです。
採用力の強化や定着率向上には、医療現場の特性や地域性に応じた柔軟な制度設計が求められます。
実際の制度設計と運用に際しては、社会保険労務士など専門家のアドバイスを受けながら、法的観点も考慮した制度構築をおすすめします。
充実した福利厚生を通じて、スタッフが安心して働ける職場環境を整えることは、職場の成長と患者満足度の向上にもつながります。
これから開業される先生も、既存の福利厚生制度の見直しを検討している先生も、ぜひ今回の内容を参考にして、自院に最適な制度の構築に取り組んでみてください。